高田のあたりまえノート
医師で、副業でエンジニアの仕事もしている高田と申します。ここには、僕があたりまえに思っていることを書いていきます。
2023年2月23日木曜日
2022年で読んで良かった本③ 「漢方概論」
2023年2月21日火曜日
2022年に読んでよかった本②「マニ教」
この記事は、2022年12月にFacebookに投稿した記事の転載です。
2022年に読んだ良かった本①「ピダハン」
この記事は、2022年の12月にFacebookに投稿した記事の転載です。
今年読んだ、良かった本のリストでも作ろうか。
1冊目。「ピダハン」
南アメリカのピダハン族の言語や生活についての記録。
著者は、言語学者で、キリスト教の教師。南アメリカの原住民の社会に入り、原住民にキリスト教を伝える仕事をしながら、原住民の言語について研究していた。そういう立場の人物による、アマゾン川上流に住むピダハンと言われる部族についての記録である。
このピダハン、我々から見ると、非常にユニークな言語を持っている。
たとえば、ピダハンの言葉には数詞がない。この人達は、基本的に、数を数えることがないのだ。彼らの言語には色の名前もない。方角(東西南北)を表す名詞もない。数や色、方角など、具体的に触れることができないものについて表現する名詞はない、という言語なのである。
ピダハンには、時刻や季節を表す単語もない。これは、ピダハンの住む熱帯雨林が、一日中薄暗い、昼も夜も区別がつかない森の中で、また、一年中、同じように温かい赤道近くであることが関係しているのかもしれない。そのため、ピダハンは、ごく短命であるにも関わらず、自分たち人間の寿命に関する知識もないし、お互いの年齢も知らないのである。
ピダハンの言語の文法には、再帰構文(「Aさんは学校に行ったとBさんが言った」というような、文の中に、別の文が入れ子になるような構文)がない。そのため、ピダハンは、お互いに、人から聞いた情報を伝えることが難しい。普通の言語では、伝聞の構文は、文が入れ子にできることを利用して作られているものだから。だから、基本的に、ピダハンが話すことができるのは、彼ら自身が自分の目で見たものだけである。特に、遠い過去のことについての伝聞情報、つまり、歴史とか神話のような、を伝えることは、ピダハンには、非常に難しい。そのため、ピダハンは、独自の神話を持たない。
ピダパンにキリスト教を伝えようとする主人公にとっては、この最後の問題が決定的な障害になった。ピダハンは、自分で直接見たことがない遠い過去の事件については語ることができない言語でコミュニケーションを取る。そういう人たちに、2000年前のイエス・キリストの話を説明するのは、非常に困難だったのである。
また、言語は、それを使う人達の思考に影響を与える。過去の歴史について語れない言語を持つピダハンは、イエス・キリストについて、たとえ、何かを聞いたとしても、興味をもつことができないのである。
このピダハンについての記録は、言語学の世界に衝撃を与えた。当時、言語学の世界の最大の権威であったチョムスキーが、すべての言語には再帰構造があるはずだ、と主張しており、多くの言語学者は、それを疑っていなかったからである。
一方、言語学の世界には大きな影響を与えた著者であるが、本人は、アマゾンの上流で苦悩を続けた。キリスト教の教義を説明できない言語がある、ということを見せつけられた彼は、彼自身の血肉であったキリスト教の教えの普遍性を信じられなくなっていくのである。しかも、彼の目の前にいるキリスト教を理解できないピダハンは、彼には、悩みなく、幸せに見える人たちなのである。彼は、ピダハンの悩みのなさを、ピダハンが、今ここにあるもの以外を表現できない言語を使っていることと関連付けて考えている。今ここにあるもの以外を表現できない人たちは、未来のことを不安に感じたり、過去のことを悔やんだり、今ここにない物事によって悩むことはできない、というのである。
本の最後で、彼は、悩んだ挙げ句、キリスト教の信仰を棄てる。その結果、彼自身と同じように熱心なキリスト教徒であった彼の家族とは、絶縁してしまう。
今年読んだ一番すごい本である。
ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観 ダニエル・L・エヴェレット (著), 屋代 通子 (翻訳)
薬効のある植物は、なぜ、薬効があるのか?
これは、2022年11月に、Facebookに投稿した記事の転載です。
植物は、自身に危険が迫っているときに、それを察知して、様々の反応する。特に、大きな危険があるときには、多くの植物は、新しい芽を出したり枝を作ったりということを一旦止めて、眼の前の危険に対応しようとするらしい。当然、そういう危険の情報を植物の全身の細胞に伝えるための、植物のホルモンのようなものがある。で、コーヒーという植物は、それをハックしているらしい。
コーヒーの実は、多くの植物が危険を感じたときに放出するホルモンににた成分を、大量に含んでいるらしいのだ。そのため、コーヒーの木が、実を落とすと、その周辺の、他の植物のタネは、危険があるものと誤認し、発芽を、いったん延期する。その結果、コーヒーのタネは、周囲の他の植物が芽を生やさないうちに、自分だけ発芽し、太陽光を独り占めし、大きく成長できる。
我々は、その、危険を知らせる植物ホルモンに似た成分を、「カフェイン」と呼んでいる。我々は、そのコーヒーの実を炒って、その抽出液をお湯で薄めて飲んで、我々の神経を覚醒させる効果を楽しんでいる。
植物が、危険の際に放出するホルモンと、人間の交感神経を刺激する成分が、お互いに非常に似通っているらしい、ということの不思議さも面白いが、ここで、当たり前に気づくことは、コーヒーがカフェインを作ることは、本来は、コーヒー好きの人間のためではなくて、コーヒー自身が、成長し、子孫を残し、繁栄するための戦略の中で、必要なものである、ということである。
コーヒー以外にも、人間や動物の体に強い影響を与える物質を作る植物は、たくさんある。そういう植物は、たいていは、植物自身にとって、そういう物質を作ることのメリットが大きいから、そうしているのだと思う。
唐辛子の実は辛い。唐辛子はカプサイシンという成分を含んでいるからである。ほとんどの哺乳動物は、だから、唐辛子を食べることを避ける。哺乳動物は、カプサイシンが粘膜に触れると、痛みや熱に似た刺激を感じるからである。しかし、鳥類は、カプサイシンでそういう刺激を感じないらしい。だから、鳥は、唐辛子を食べる。唐辛子は、そうして、鳥にだけ食べられる。鳥は、空を飛ぶから、哺乳動物よりも行動範囲が大きい。そうして、鳥は、哺乳動物よりも広い範囲に糞を落とす。唐辛子は、鳥の専用の食品になることで、他の類縁植物よりも、より遠くに、鳥の糞に混ざってタネをバラまくことができる。カプサイシンは、唐辛子の繁殖のための戦略なのであり、別に、唐辛子は、人間の食卓を豊かにするためにカプサイシンを作っているわけではないのだ。
彼岸花の根は、毒を持つ。だから、ネズミやモグラなどの地中の小動物は、彼岸花を植えてあるところには、穴を掘らない。墓の近くに彼岸花を植えるのは、昔、土葬が普通だった時代、そういう小動物が遺体をかじって、墓の近くで繁殖することを防ぐための工夫であった。もちろん、彼岸花は、人間の墓を守るために毒を作るわけではない。彼岸花は、夏までに葉をつけ、光合成し、その栄養で、秋に花をつける植物である。秋に花をつける頃には、彼岸花には葉はないのだ。つまり、光合成する時期と、花をつけて繁殖する時期に、明確な時間差がある植物なのである。その時間差の間、栄養は、彼岸花の根茎に蓄えられる。繁殖のための栄養を蓄えた根茎を地中の小動物や昆虫から守るのは、彼らにとっては死活問題なのだ。そのための毒である。
さて、病気や怪我の治療に使える効果を持つ成分をつくる植物は、たくさんある。「薬草」なんて呼ばれる。おそらく、こういった薬草が、薬として利用できる成分をつくるのは、本来は、人間の医療に役立つためではないはずである。植物は、その植物自身が繁殖し成長するために、なにかメリットがあるから、薬を作っているはずだ、と思う。
麻黄という薬草がある。エフェドリンという成分を含み、それを服用した人間の心拍数を増やし、気管支を拡張し、発汗を促す。その性質を利用して、喘息の薬などに使われる。
あるいは、桂皮(桂枝、シナモン)という植物がある。血行を促進し、体温を上げ、発汗を促す効果がある。それを利用して、感冒の薬などに使われる。
「こういう薬用植物は、どういう生存戦略で、こんな成分を作っているのでしょうか?」「こういう薬用植物が繁殖するために、薬の成分を作ることは、どういうメリットがあるのでしょうか?」と、最近、色んな人に意見を聞いてみたのだけれど、みんな、そんなこと考えたこともない。という。文献も探してみたが、見つかった範囲では、そんなことを書いている人は、どうもいないらしい。
でも、薬を作ることは、植物自身にとっても、かなりコストがかかることのはずなのだ。であれば、植物自身にとっても、そのコストに見合うメリットがあるはずだ、と思う。
だれか、そういう事を考えている人、いないでしょうか?
2022年6月23日木曜日
linux on vbox on winをアップデートしたときに、重たいと感じたらすること
ずっと、lubuntuをvbox on win上で開発環境として使っています。
メインの開発環境以外は、直接ハードウェア上にインストールしたubuntuですが、メインだけは、vbox上です。
vboxなのは、手軽なのと、あと、開発環境がポータブルだと、やっぱり別のマシン上に移動するときに便利だからです。
で、最近、lubuntuを18から一気に22にアップデートしました。急に重たくなった。で、色々やったのですが、まあ、たぶん、次にアップデートするときにも、同じようなことをやるんだろうなぁ、と思うので、色々試したことを書いておきます。
書いてみると、結局、当たり前のことばかりですね。
1, 余計なサービスが動いていないか確認。
2, guest側window system で不要な設定がされていないか確認。
3, guest側の背景画像をなくして、背景は一色にすること。
4, guest側のディスプレイの設定、グラフィックコントローラの設定の確認。
5, guestに割り当てるメモリを増やす。
あと、おそらく、次は、lubuntuはないかなぁ、と思っています。だんだん、私が、最新のパッケージの機能を必要としなくなっているので、ubuntuの新しいパッケージに付いていくのがしんどいんですよ。自分で書いているスクリプトのたぐいを、いろいろ、最新の環境に合わせて書き換えなきゃならないの、大変ですからね。次からは、debianかねぇ。
2022年3月13日日曜日
ウクライナ危機について、今、思っていること
2月24日、ロシア軍がウクライナに侵攻しました。
この記事を書いている現在も、ロシア軍が、ウクライナの首都のキエフに迫っています。
この記事は、その状況下で、戦乱から遠く離れた東京で、私が考えていたことの記録です。一部、未来予測的な部分を含むので、あとから見直すことができると有意義だと思って、記事にして残しておくものです(最近、その時々にあたりまえのように考えていたことを記録に残しておくと、非常に良いと思うようになりました。自分の立場や健康状態などによって、あたりまえだ、当然だと思っていることは、大きく変わっていくからです。)
想定読者は、数年後の私ですから、ここに書いてあることに反論がある人がいらっしゃっても、特に議論するつもりはありません。私は、この分野には、素人ですから、まあ、間違ったことも書いていると思うのですが、それもまた、未来の自分に読ませるためです。
1,この戦争は、非常に珍しい戦争である。
たぶん、私は、子供の頃に聞いたのと思いますが、「マクドナルドが出店している国同士は、戦争はしない」という言い回しがありました。出典は知りません。実際、これまで、マクドナルドが出店している国同士で戦争が起こったことがあるかどうかも知りません。おそらく、この言葉の意味は、十分に国際経済の一部になった国同士は戦争しない、という程度の意味でしょう。十分に国際経済から恩恵を受けている国同士は、戦争で得るものよりも失うもののほうが多い。だから、戦争しない。そういうことだと思います。
ところが、今回起こっているのは、マクドナルドがある国同士の戦争です。ロシアにもウクライナにもたくさんのマクドナルドがあります。今回、我々は、そういう、グローバル経済の一部であるような、しかも、それなりに大きな国同士が戦争すると、どうなるか、を、見せられているわけです。
2,経済制裁等が思ったより効いている。
ウクライナは、NATO諸国に助けを求めています。しかし、NATO諸国も、その同盟国も、直接に軍隊を派遣するような支援はしていません。経済制裁と、武器供与だけです。ところが、思った以上に、この経済制裁や武器供与が効いている。ウクライナに入ったロシア軍は思った以上に苦戦していますし、制裁を受けたロシア経済は破綻寸前で、おそらく、それほど長く戦争を続ける力は残っていません。
経済制裁が効いているのは、これは、これまで以上に世界経済が一体化している、いわゆるグローバル化が進んでいること、また、武器供与が効いているのは、戦争が、これまで以上にハイテク兵器に頼るようになってきたこと、が理由でしょう。
ここ十数年で、世界の多くの国が、これまで以上に、諸外国との貿易や国際投資の恩恵を受けるようになりました。その結果、グローバル経済から切り離されることは、これまで以上に高くつくようになったのです。その結果、経済制裁は、より強く効くようになった。よく、「経済制裁だけで防げた侵略はない」という言い方がなされますが、今回は、その、初めての反例になるかもしれません。
3,ウクライナの宣伝がうまい。
事前に思っていたよりも遥かに、ウクライナの宣伝戦というか情報戦は、旨いと思います。対して、ロシアは、あまりうまくない。このあたりは、近い将来、いろんな分野の宣伝の、ひとつのモデルケースになるのではないでしょうか。
4,このあとどうなるか(1)
3月13日現在、私は、もう、ロシアは、勝てないだろうと思っています。仮に、キエフが陥落しウクライナが負けても、ロシアは、ごく一部のロシア人居住地域を覗いて、ウクライナを占領できないでしょう。なにより、当面、厳しい経済制裁は解除される見込みはありません。経済制裁が解除されなければ、ロシアは、どんどん貧乏な国になっていきます。ロシアは、今や、韓国よりもGDPの小さな国です。これが、北朝鮮よりもGDPの小さな国になれば、おそらく、NATO諸国の安全保障は、いまよりもずっと簡単になります。おそらく、そのあたりが落とし所になるのではないでしょうか。
グローバル経済が発達した時代において、経済的エンガチョは、爆弾よりもパワフルな攻撃力を持つ兵器なのです。
西欧にとっての脅威になりえないくらい程度の弱小貧困国になったロシアが、ウクライナから撤退し、周辺諸国に作った、いくつもの自称「共和国」への支援をすべて解除し、制裁を解除してもらう。そういうふうになる可能性が高いんじゃないかな、と思っています。
5,このあとどうなるか(2)
経済制裁だけで、侵攻を止め、一つの大国を無力化できることができるという前例ができれば、おそらく、欧米の次のターゲットになるのは、中国です。
口実は、たぶん、いくらでもありえるでしょう。ウイグル問題でも、チベット問題でも、なんでもいい。中国の人権侵害や侵略と感じられる問題に対して、経済制裁が行われる。おそらく、中国は、理不尽だと感じるでしょう。私の知る限り、多くの中国人は、チベットもウイグルも、中国の一部だと本気で信じていますから。しかし、中国の信念は、制裁を解除する理由にはなりえません。制裁する国々に通じる論理で正当性を説明できない限り、制裁は解除されないからです。
もちろん、ひょっとしたら、こんな制裁は、起こらないかもしれません。しかし、将来、経済制裁を受けるかもしれないという可能性だけで、資本は、中国を避けるようになるでしょう。そうなれば、中国の経済成長は、今後は、これまでよりも難しくなるのではないでしょうか。
6,「ならず者国家」を排除したら、世界は平和になるのか。
ならないでしょう。おそらく、中露が弱体化すれば、欧米諸国同士の醜い争いが起こるようになるだけです。
追記。
個人的には、この投稿で予想したようになればよいな、とも思っています。ですので、予想だけでなく希望も入っています。武力介入せずに、経済制裁だけで大きな戦争を封じ込められるなら、また、それで、自由で民主的な国家群を守ることができるなら、完全に平和ではなくても、それで充分です。
2021年4月23日金曜日
ビザンチン将軍問題は、オスマン将軍問題に改名したほうがいい気がします
ビザンチン将軍問題は、オスマン将軍問題に改名したほうがいい気がします、という話。長いよ。