エンタープライズ号の船医、ドクターマッコイの有名なセリフです(あまりに有名なので、スタートレックシリーズに登場する医者は、ほとんど全員、類似のフレーズを口にします。オリジナルに対するパロディーですね)。
スタートレックシリーズに出てくる医者は、だいたい、そこそこ器用でいろんなことができるキャラクターおのて
スタートレックシリーズに出てくる医者は、だいたい、そこそこ器用でいろんなことができるキャラクターおのて
め、しばしば、仲間から奇妙な雑用を押し付けられるのです。そして、シリーズを通して、奇妙な雑用を押し付けられるたびに、彼らは「私は医者だ、○○ではない。(I'm a doctor, not a XXX.)」と叫ぶのです。
さて、ずいぶん前の記事ですが、こういうのみつけました。
Scanaduという会社の製品ですね。
昨年6月のgismodoの記事を見ると、今年3月発売予定だったようですが、ページを見る限り、まだ発売していないようです。
この会社のイメージ動画みたいなのがYoutubeにありますね。
これを見ると、いろんな生体情報を取り込んだり、写真をとったりして、それを元に簡単な診断を下したり、どのようにすればいいのかアドバイスしてくれたりするようです。
この会社は、要するに、スタートレックシリーズに出てくる医療用トリコーダーみたいなイメージの製品を作りたいようです。
トリコーダーというのは、スタートレックシリーズに出てくる、宇宙艦隊の官給品のポータブル万能科学探知機のようなもので、科学調査用と医療用があります。初代シリーズでは、科学調査用のほうはミスタースポックが、医療用はドクターマッコイが使っていました。後者には、自動診断機能のようなものがついていて、プローブを患者に当てれば、その健康状態や、考えられる病気などを表示してくれ、食べ物などに当てれば、その毒性や、含まれる栄養、細菌などを表示してくれます。
昔、スタートレックを見て、あのトリコーダーがあれば、勉強しなくても医者ができるのになぁ、と思っていたことを覚えています。
さて、技術的には、このビデオでやっていることのほとんどはそれほど難しくありません。一般消費者に売るレベルではともかく、研究室レベルであれば、たくさんの先行事例があります。
以下、少し気になった点をふたつ。
1,スマートフォンの写真による発疹の診断。
ビデオの中に、ユーザーがスマートフォンのようなものでとった写真をScanaduで読み込むと、その写真から、Scanaduが発疹の種類や原因、対応を診断するシーンがありました。それを見て、これは本当に可能なのかな、と思いました。
典型的な発疹であれば、写真から、ソフトウェアのパターン認識で自動的に診断することは、現在でも十分に可能です。問題は、素人であるユーザーが写真に納める部分が、必ずしも、その発疹の典型的な部分ではない、ということではないかと思います。
僕は、子供の発疹については、できるだけ、その場で携帯電話で写真をとっておいて、受診時に見せてくれるように親に指導しています。
子供の皮膚の症状について心配する親は多いです。それに、子供に多い感染症では、皮膚の症状は、病気の診断の重要な手がかりになることも多いのです。しかし、しばしば、その種の発疹は短時間で消えてしまいます、そうなると、医師は診察時にそれを見ることができません。そんなとき、親に、発疹の形や色などについて思い出しながら口頭で説明してもらうよりは、写真でもとっておいてもらったほうが、どのような発疹があったのかについて、ずっと正確に理解することができます。
でも、僕の経験からすると、写真をとってもらっても、しばしば、医学の素人である親が心配して写真にとってくれるものと、医学的に重要なものは一致しないのですね。Scanaduにみせるための適切な写真を自分でとれる患者は、案外少ないのではないかと思います。
2,消費者は「機械の間違い」を許容できるか。
あたりまえのことですが、他の多くの分野での難しい意思決定と同様、診断など医療の意思決定でも、一定の確率で間違いが発生します。つまり「誤診」です。
機械の自動診断も間違えることがあります。
もちろん、人間の医師だってしょっちゅう間違えますし、ソフトウェアによる自動診断は、分野によっては相当に進んでいて、今では人間の医師よりも正確な診断をできることもあります。つまり、機械による自動診断は、正確さにおいて、それほど人間の医者に劣っているわけではありません。
しかし、それでも、一定の確率で、間違えるのです。
僕は、現在の一般消費者は、あまり「家電製品」がしょっちゅう間違える、ということに慣れていないのではないかと思います。
「家電製品に搭載されたソフトウェアだって人間と同様、一定の確率で間違えるかもしれない。でも、それでもこの製品は、健康のためにアドバイスしてくれる便利なシロモノなんだ。」と一般ユーザーが自動診断機を受けいれてくれる日は、きっと将来来ると思います。でも、その前には、いろんなハードルがある気がするのです。
さて、懸念材料をいくつか挙げましたが、それでも、僕は、スタートレックのトリコーダーのような機械が過程に普及しているような未来を信じています。
ドクターマッコイはドアストッパーでもエンジニアでも車掌でも石屋でもないぞ。
さて、ずいぶん前の記事ですが、こういうのみつけました。
Scanaduという会社の製品ですね。
昨年6月のgismodoの記事を見ると、今年3月発売予定だったようですが、ページを見る限り、まだ発売していないようです。
この会社のイメージ動画みたいなのがYoutubeにありますね。
これを見ると、いろんな生体情報を取り込んだり、写真をとったりして、それを元に簡単な診断を下したり、どのようにすればいいのかアドバイスしてくれたりするようです。
この会社は、要するに、スタートレックシリーズに出てくる医療用トリコーダーみたいなイメージの製品を作りたいようです。
トリコーダーというのは、スタートレックシリーズに出てくる、宇宙艦隊の官給品のポータブル万能科学探知機のようなもので、科学調査用と医療用があります。初代シリーズでは、科学調査用のほうはミスタースポックが、医療用はドクターマッコイが使っていました。後者には、自動診断機能のようなものがついていて、プローブを患者に当てれば、その健康状態や、考えられる病気などを表示してくれ、食べ物などに当てれば、その毒性や、含まれる栄養、細菌などを表示してくれます。
昔、スタートレックを見て、あのトリコーダーがあれば、勉強しなくても医者ができるのになぁ、と思っていたことを覚えています。
さて、技術的には、このビデオでやっていることのほとんどはそれほど難しくありません。一般消費者に売るレベルではともかく、研究室レベルであれば、たくさんの先行事例があります。
以下、少し気になった点をふたつ。
1,スマートフォンの写真による発疹の診断。
ビデオの中に、ユーザーがスマートフォンのようなものでとった写真をScanaduで読み込むと、その写真から、Scanaduが発疹の種類や原因、対応を診断するシーンがありました。それを見て、これは本当に可能なのかな、と思いました。
典型的な発疹であれば、写真から、ソフトウェアのパターン認識で自動的に診断することは、現在でも十分に可能です。問題は、素人であるユーザーが写真に納める部分が、必ずしも、その発疹の典型的な部分ではない、ということではないかと思います。
僕は、子供の発疹については、できるだけ、その場で携帯電話で写真をとっておいて、受診時に見せてくれるように親に指導しています。
子供の皮膚の症状について心配する親は多いです。それに、子供に多い感染症では、皮膚の症状は、病気の診断の重要な手がかりになることも多いのです。しかし、しばしば、その種の発疹は短時間で消えてしまいます、そうなると、医師は診察時にそれを見ることができません。そんなとき、親に、発疹の形や色などについて思い出しながら口頭で説明してもらうよりは、写真でもとっておいてもらったほうが、どのような発疹があったのかについて、ずっと正確に理解することができます。
でも、僕の経験からすると、写真をとってもらっても、しばしば、医学の素人である親が心配して写真にとってくれるものと、医学的に重要なものは一致しないのですね。Scanaduにみせるための適切な写真を自分でとれる患者は、案外少ないのではないかと思います。
2,消費者は「機械の間違い」を許容できるか。
あたりまえのことですが、他の多くの分野での難しい意思決定と同様、診断など医療の意思決定でも、一定の確率で間違いが発生します。つまり「誤診」です。
機械の自動診断も間違えることがあります。
もちろん、人間の医師だってしょっちゅう間違えますし、ソフトウェアによる自動診断は、分野によっては相当に進んでいて、今では人間の医師よりも正確な診断をできることもあります。つまり、機械による自動診断は、正確さにおいて、それほど人間の医者に劣っているわけではありません。
しかし、それでも、一定の確率で、間違えるのです。
僕は、現在の一般消費者は、あまり「家電製品」がしょっちゅう間違える、ということに慣れていないのではないかと思います。
「家電製品に搭載されたソフトウェアだって人間と同様、一定の確率で間違えるかもしれない。でも、それでもこの製品は、健康のためにアドバイスしてくれる便利なシロモノなんだ。」と一般ユーザーが自動診断機を受けいれてくれる日は、きっと将来来ると思います。でも、その前には、いろんなハードルがある気がするのです。
さて、懸念材料をいくつか挙げましたが、それでも、僕は、スタートレックのトリコーダーのような機械が過程に普及しているような未来を信じています。
ドクターマッコイはドアストッパーでもエンジニアでも車掌でも石屋でもないぞ。
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