2019年7月19日金曜日

宗教家としての山本太郎(あるいは、スピリチュアル政党としてのれいわ新選組)

もうすぐ、参議院選挙です。
ここしばらく、私、山本太郎をウォッチしていました。
このエントリーは、そのウォッチの記録、選挙直前、私が彼を見て何を思っていたか、の記録です。あらかじめ、書いておきますが、山本を強く支持する人や、反対に、彼を強く批判している人は、このエントリーを読んで、不快になるかもしれません。

私が山本をウォッチし始めたのは、最初は、彼の政策への関心からだったのです。
ほう、日本にも、MMTをベースにした左派新党が登場したか。消費税を批判し、貧困層の救済を主張し、その財源として、大規模な国債発行を主張する。それなら、まさに日本のサンダースだな、と。そう思って見ていたのです。

しかし、見ているうちに、どうも、こいつはサンダースではない。それどころか、左翼ですらない。左翼系の学者たちをブレーンにつけているそうだけれど、どうも、この人は、左翼とか右翼とか、そういうポジションとはちょっとズレている。そう思うようになりました。

山本太郎は、一度、天皇に直訴したこともあるように、かなりの「尊王家」です。そう認識した上で話を聞くと、彼のスピーチは、かなり、普通の左翼とは違います。

日本では、左右対立の最大の争点の一つは、憲法であり、安保でした。
今回の選挙でも、憲法改正派が3分の2を維持できるかが一つのポイントになっています。しかし、山本は、この選挙戦の間、ほとんど、安保についても憲法についても発言していません。与党が3分の2取るかどうかにも無関心に見えます。3分の2とらせないという話の代わりに出てくるのは、「政権を取りたい」という劇画的なくらい非現実的な叫びです。おそらく、山本は、安保や憲法には、さして興味がないのだと思います。

また、彼のスピーチには、ほとんど安倍首相の批判が出てきません。左派政党の政治家のスピーチは、しばしば、右派から「アベガー」と揶揄されるように、スピーチの相当部分が安倍政権への批判で占められている事が多いのです。しかし、山本は、ほとんど安倍首相批判に言及しません。確かに、貧困や福島の問題には強い関心を持っている(それも、あまり、科学的に正しい理解を伴っているわけではないのですが)のは左翼っぽいのですが、その関心も、左翼的というより、非常にエモーショナルなもので、少し前の「次世代の党」などに似た右翼系ポピュリズムに近いニュアンスを感じるのです。もし、自民党が、消費税減税をするから憲法改正に賛成しろとバーターを持ちかけてきたら、山本は、その取引を受け入れる可能性があるのではないでしょうか?

おそらく、政治家になる前の山本太郎のもともとの立ち位置は、安倍アッキーなんかと似た、科学や政治に対して不信感を持ち、自然に近いものや伝統的なものに好感を持つ、薄めのスピリチュアル左翼(あるいは、厨二左翼とでも言うべきか)とでもいうべきポジションだったのだと思うのです。それが、福島原発事故を契機に、政治に関心をもつようになって、ああいうふうに変わっていったのでしょう。

政治家になってからの山本の成長は著しく、特に、ここしばらくで国会質問は急にサマになってきました。同時に、街頭でのスピーチも抜群にうまくなってきました。しかし、今でも、本質的には、彼は、もともとの厨二スピリチュアル政治家のままなのです。

私は、今度の「れいわ新選組」の、消費税廃止とかなんとかは、左翼的なポピュリズムというより、厨二感覚で立案された政策なんじゃないかと疑っています。おそらく、ネット上で山本の新党について語っている人の多くは、劇画でも読んでいる感覚で見ているんじゃないでしょうか?支持者の多くも、おそらく、彼の語る政策が実際に実現すると考えているわけではなくて、その、非現実的だけれど痛快な政策一覧を見て、劇画的に楽しんでいるのではないかと思うのです。

彼のスピーチのキメ台詞、「あなたをしあわせにしたいんだ」「あなたは、そこに存在するだけで価値がある」も、左翼的なアジテーションというより、スピリチュアルな叫びだと思います。

ネットでは、山本を支援する人の多くが、彼の街頭演説の動画を拡散して、フォロアーたちに見るように勧めています。その際、かなりの山本支持者が、「投票しなくてもいいから、これを見ると元気になるから」見てほしいと言っています。政治家の応援で、「動画を見ると元気になるから」といって演説動画を勧めている人たちは、私は初めてみました。自民党や民主党や共産党の支持者では、ある政治家を応援すると元気になれるなんて言って応援していた人たちは、おそらく、これまで、ほとんどいなかったのじゃないかと思います(実は、これまでだって、「政治家を応援する会に行くと元気になる」という話は、まったくないというわけではありません。「元気がほしいから、アントニオ猪木の応援に行ってビンタをしてもらう」といっていた人を、私は一人知っています。)。確かに、山本のスピーチは、熱量が大きくて、人によっては、元気が出る人も多いでしょう。

元気になるというご利益のある演説会、というのは、非常に宗教的です。私は、山本太郎という人は、宗教家としての才能がある人ではないかと思っています。また、彼の新党には、宗教団体のようなカラーがあると思っています。その新党が、東京選挙区で、先輩格の宗教政党の党首にケンカを売るような選挙戦を演じているのは、単にプロレス的に面白い選挙エンターテイメントではなくて、おそらく、かなり考えた上でやっていることだと思います。

さて、もうすぐ選挙です。私は、山本の新党に投票するつもりはありません。彼らの非現実的な政策に賛成出来ないからです。しかし、彼らを、非常に強い関心を持ってみています。おそらく、れいわ新選組は、今回、数議席確保するでしょう。

今回の選挙でれいわが集めたユニークな候補者の面々は、山本の人脈作りの能力の高さを示しています。今は非現実的な政策を掲げている山本ですが、政党要件を満たせば、今後、もっとよいブレーンを集めて、もっと現実的な政策を作る能力を持つようになる可能性も十分にあると思います。

今後、どうなっていくか、引き続き、見ていこうと思います。

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