2013年7月11日木曜日

風疹予防接種について、参議院選挙の東京選挙区で立候補している候補者に質問しました。

さて、今回の参議院議員選挙は、初めてのネット選挙です。有権者と候補者が、選挙期間中にネットで意見を交換できるというのは、画期的だと思います。テレビや新聞で話題になる「大きな争点」についてはともかく、案外自分の気になっている政策については、どの候補者がどのように考えているのか、わからないですからね。自分の気になっている政策について、ネットで質問してみれば分かるかもしれません。

僕が目下一番気になっている政策は、政府の風疹対策なんです。
ご存知のように、現在、日本では、風疹が大流行しています。風疹は、それ自体の症状はたいしたものではありません。せいぜい2〜3日発熱と発疹が出て、あとは、勝手に治癒してしまう軽症の感染症(そのため、「3日はしか」とも呼ばれています)です。ただ、妊婦に感染すると、生まれてくる子供に障害が起こることがあるのですね。

この風疹、現実的な対策は、予防接種以外にはほとんどありません。しかし、ご存知の通り、日本国内では風疹のワクチンは極端に不足しています。

多くの現場の医師が、絶対にワクチンの輸入が必要な状況だと考えているのですが、目下、政府はワクチン輸入には否定的です。

そういうわけで、facebookを使って僕の住んでいる東京選挙区から立候補している候補者に、風疹輸入ワクチンについて質問を投げて見ました。

何人かの候補者に、質問を投げてみたのですが、今のところ、返事があったのは、そのうち一人、民主党から立候補している鈴木寛候補だけです。

以下は、僕の投げた質問です。

私は東京選挙区の有権者で、東京都内で医師をしている高田と申します。
鈴木寛候補の風疹予防接種に関する政策についての見解をお伺いしたく、投稿させて頂きます。

報道等でご存知と思いますが、現在、全国的に風疹が大流行しており、その合併症としての先天性風疹症候群による重い障害を負った赤ちゃんが次々に生まれるという不幸な状況が起きています。

風疹の流行を食い止め、赤ちゃんがこれ以上重い障害に苦しまずに生まれてくるためには,国民広くに風疹予防接種を行うことが、ほぼ唯一の効果が見込める対策と考えております。

しかし国産の風疹ワクチンは生産が追付かず、不足している状況であり、目下の流行を食い止められる状況に全くなっていません。

この状況を打破するには国が、海外製ワクチンを早期に緊急輸入するしかないと我々現場の医師は考えておりますが、残念ながら厚生労働省にその気配は伺えません。

それどころか、田村厚生労働大臣に至っては「風疹患者はまだ1万人に過ぎない」と記者会見で発言して,医療関係者と先天性風疹症候群被害者はおろか、全世界の公衆衛生担当者の失望を買いました.
風疹大流行を受けてWHO(世界保健機構)や米国の衛生機関CDCは「日本は風疹が大流行しているからワクチン接種していない人は渡航すべきではない」と強く警告を受けている始末です。詳しくは、下記のリンクをご参照ください。
http://www.nytimes.com/2013/06/25/health/rubella-epidemics-in-japan-and-poland.html?smid=fb-share&_r=0http://www.qlifepro.com/news/20130628/wary-us-cdc-japan-rubella-prevention-measures-deficiencies-and-attention-your-travel-to-japans-call-for.htmlこの状況の原因は風疹をはじめとする予防接種政策全般の不作為によるものです。

そこで鈴木候補にお聞きします。
この現状について、ご当選の暁にはどのような政策を実行していただけますか?
特に風疹の「排除」に向けて海外製ワクチンの緊急輸入も含めてどのような抜本的な政策を実行していただけますか?東京選挙区の有権者として、率直にお尋ね申し上げます。最後まで読んでいただきありがとうございました。

先日、これに対する回答がfacebookのノートでかえってきました。

【すずきかんが答えます】風疹予防接種について医師からのご質問

【回答】高田様、ご質問ありがとうございました。
今回の風しんの流行に関して、多くの先天性風しん症候群(CRS)のお子さんが生まれていること、およびその背景には、表に出ない、風しん感染を理由としての妊娠中絶の増加という、悲しい事態が起きています。ワクチンで予防可能な感染症で、このような事態を招いたことを、立法府の一員として、大変申し訳なく感じています。

2009年の新型インフルエンザ流行時に、私は民主党政権の一員として、海外からのワクチンを特例承認として、迅速に輸入すべく奔走した経験があります。今回の風しん流行を抑え、今後は二度とこのような大流行を起こさないためには、ワクチン接種の気運が高まっている現在において、特例承認もしくは、すでに提出されて何年も経っている MMRII の審査を速める、などの方法にて、速やかにワクチンを提供することが必要と考えています。

ワクチン政策に関しては、従来の厚労省下の検討会でなく、米国の Advisory Committee of Immunization Practice; ACIP のように、独立した諮問機関が必要であり、科学的な議論によってワクチン実施の是非が決定されるべきです。現在、厚労省は厚生科学審議会などの、従来のシステムに、このような機能を持たせることを考えているようですが、それでは不十分と考えています。

一方で、社会を守るためのワクチンで、一部の方が不幸にして副反応に遭われた際は、十分に救済してあげることが必要です。日本では補償が不十分なため、民事訴訟での賠償請求が行われています。これは、被害者にとってはハードルが高いことですし、企業側にとって訴訟リスクが大きいことは、ワクチン開発が進まない一因です。米国の Vaccine Injury Compensation Program; VICP など、見倣うべきと考えております。

2013年7月8日 鈴木寛
まず、本当に回答が帰ってきたことに驚きました。実は、あまり返事は期待していなかったのです。
議員というのは、こういった細かい政策一つ一つについて専門家というわけではありませんし、この質問は、いいかげんに回答するにはデリケートな質問です。変な答えをして、攻撃される可能性を考えると、ダンマリを決め込む可能性が高いと思っていました。
たとえ返事がなくとも、候補者に、自分のような人間の声を伝えるだけでも有意義であろうと考えて質問したのですが、嬉しい誤算でした。

内容については、質問した風疹ワクチンの輸入については記載はありません。しかし、MMRIIの審査の話しや、日本版ACIPの話など、ちょっと普通の人は知らない話しも触れられていて、この人が、この問題に熱心であることがよくわかりました(もちろん、優秀なブレーンもいるのでしょう)。

残念ながら、この人、現在、野党なんですよね。
感染症予防のような分野は、党派を超えて協力しあって議論できる分野ではないかと思っています。
期待しています。

投票を棄権したっていいんじゃないの?

多くの人がこういう意見に反対なのを知ってて、あえて書く。

別に、投票を棄権したい奴は、棄権してもいいよ。
投票しても投票しなくても、それは、僕達の自由だ。

参議院選挙が近づいて、選挙で棄権するのはいけないことっていう投稿があちこちで流れているんだけれど、僕は、正直、こういうのに違和感を感じてる。
投票に行く事は、別に悪いことじゃないけれど、棄権することだって取り立てて悪いことだとも思わないのだ。
投票権ってのは権利であって義務じゃない。
あれは、一種のオプションなんで、行使してもしなくてもいいってところに、良さがある。

投票に関しては、どんな権利の行使の仕方についても、「コレコレせねばならない」「コレコレするべきだ」といった言い方は慎むべきだと思う。たとえ、それが、「棄権すべきではない」ということであってもだ。それが自由というものだと思う。

棄権するのに、「多忙だから」とか、「誰に入れても変わらないから」とか、言い訳をする必要はない。また、「現状の政治や政党全体への不満の表明」なんて難しい理屈をこねる必要もない。単に、棄権したければ、堂々と棄権すればいい。それは、ひとつの正しい権利行使のありかたでしかないのだ。

投票率が下がれば、投票結果が国民全体の意見を反映しなくなるという批判もあるかもしれない。でも、全員が投票しなくても、国民全体の意見の分布を統計的に推測することは可能なはずだ。この種の統計推論は、各種の疫学調査やアンケートで使われている。
投票しない人の意見も反映するような選挙制度は技術的に可能だ。
現行の選挙制度のような、バイアスのかかった「全数調査」よりも、適切な少数サンプル調査のほうが、全体の意思の確認には、はるかに優れている。

本当に全員が投票に行く必要なんてあるんだろうか?

僕自身は、今回は投票には行くつもりだ。いまや崩壊寸前の、僕の支持する泡沫政党を応援するためにいく。でも、今後もずっと毎回投票に行くとは保証できないし、べつに、保証するつもりもない。それが悪いとも思っていない。

2013年6月10日月曜日

ノマドって案外大変だよ。

ここ何年か、ノマドってのが流行ってますよね。フリーランスのことだったり、会社のオフィス以外の場所で仕事するスタイルのことだったり、ちょっと多義的な感じの言葉ですが、今日は、その話をしようと思います。

僕は、医者とエンジニアの仕事を兼業するようになって、もう、10年近くになります。医者一本で仕事せずに兼業を始めた、そもそもの理由の一つは、ノマド的な仕事のスタイルに憧れたからなんですね。医者の仕事ってのは、どうしても時間と場所に制約があります。患者っていう相手に会わないと仕事ができないんだから当然のことです。診療のスタイルによって若干違いますが、どうしたって患者が来る/いる時間に合わせて診察室や、入院病棟や、あるいは患者の自宅に訪問したりして仕事をする必要があるわけです。
で、そういうのじゃなくて、自分の好きな時間に好きな場所で仕事がしたいな、と、数年前、ふと思ったのです。僕は、昔から、プログラムを書くのはソコソコ得意でしたので、プログラムを書くような仕事ならば、時間や場所の制約が少ないんじゃないかな、と思ったのでした。

最初のうちは、某企業におじゃまして仕事していました。ただ、オフィスでの仕事って、結構割り込みがあるのですね。
一心不乱にプログラムを書いている時に、他の仕事が割り込んでくると、結構、うっとおしい。それが重要なものならば、納得もできるのですが、たいていは、くだらない相談とか、くだらないミーティングのたぐいが割り込んできて仕事が中断する。と、もううんざりです。
大したことない割り込み仕事は、ちゃちゃっと終わらせるんですが、割り込み前の意識の集中を取り戻すのに、また、結構、時間がかかっちゃうんですね。

で、やっぱり自宅で仕事したほうがいいかな、と思うようになったわけです。
自宅で一人で仕事をしていれば、こういう面倒な割り込みを最小限にできるじゃないか、そうすれば、仕事の能率も最高度に上がるんじゃないか。好きな時間まで自由に仕事をして、好きな時間まで自由に休んで、時間に拘束されないなんて、理想の仕事のスタイルじゃないか。
そう思っていたのです。

そういうわけで、一昨年くらいから、エンジニア的な仕事をするときには、完全に自宅で仕事をするように切り替えてしまいました。仕事の打合わせなどは外で行いますが、引き受けた仕事は、自宅で行うようにしたのです。

さて、自由に仕事ができるようになって、自分のしごとの能率は上がったのでしょうか。実際にやってみると、現実は、もう少し複雑でした。ノマドを始めた時には思ってもいなかった弊害がたくさん出てきたのでした。リストにしてみます。

1,集中力が持たない。
割り込みがなくても、誰も見ていない環境で長時間集中して仕事をするというのは、案外むつかしいのです。
上に書いたように、僕は、仕事中に集中が途切れるのは、周囲から邪魔が入るからだと思っていました。集中している時に限って、一緒に昼食を食べようと誘いが入ったりとか、緊急でどうでもいい会議が入ったりとか。
でも、実は、そういう邪魔が入らなかったとしても、長時間、一人で仕事に集中するというのは案外難しいのです。長時間一人でいると、つい、お菓子を食べたり、ボーッとしたり、部屋の片付けをしたり、気がつくと、一日過ぎていて、今日は本当は何をするつもりだったんだっけ?ってなことになりがちです。会社などに勤めている間はそれほど自覚しないでしょうが、僕以外の多くの人も、何も刺激がない中で集中力を維持するのは難しいのではないかと思います。

2、生活リズムが維持できない。
仕事を好きな時間に初めて、好きな時間に終わらせる。それが当初の理想でした。でも、そうなると、睡眠や食事、仕事の時間が、マチマチになります。
昼間ずっと眠っていた後、夜中に起きだして仕事して、そのまま翌日も一日パジャマで仕事して、気がつくと正しい生活のリズムなんて吹き飛んでしまうんですね。人間は、生活のリズムが乱れると、すぐに体調を崩してしまいます。大学生の頃は、そういうリズムの乱れた生活でも平気でした。でも、今の僕は大学生の時より年をとって、ずいぶん体力も落ちているんですね。「勤務時間」を決めないと体力が持ちません。

3,自分で決めた勤務時間を守れない
「勤務時間」を自分で決めたとしましょう。たとえば、仕事は必ず9時から17時までにする、という風に決めてしまうのです。これは、好きな時間に仕事をするより、ずっと体には良いようです。でも、案外、自分で自分の「労務管理」を行うというのは難しいのですね。誰かが監視していないと、仕事をはじめる時間も終わる時間も、簡単にずれてしまいます。

4、世間話は重要
人と話さないで仕事を黙々と行うというのは、案外つらいものです。少しだけでも、他の人と話す時間を作るというのは重要です。うまく言えないんですが、全く人と話さないでずっと仕事をしていると、何か、自分がおかしくなりそうになるんですよね。メールやツイッターなどは、会話の代替にはなりません。
あと、技術的な仕事をしていると、他の人の意見を聞いたり、質問したりというのは、非常に重要になります。そういうのって、普段の世間話の中で少しずつ自然になされるものなんですね。

5,自宅で仕事したって、案外、邪魔は入る。
あと、家族がいる自宅で仕事をするというのは、実は、想像以上に邪魔がはいるものです。

僕の場合、医者と兼業だったので、上記のような弊害は、比較的軽症だったとは思います。医者の仕事は、どのみち、時間を決めて、その時間に診察し、患者と話さなくてはなりませんから。だから、エンジニア部分でどんなにいい加減にやっても、完全に会話がなくなったり、勤務時間がなくなったりしたわけじゃないんですね。でも、本当にエンジニア一本で、自宅(あるいは、スタバとかのカフェで)で一人で仕事をしてたら、もっと苦しかったのじゃないかと思います。

というわけで、最近は、次のようにしています。

1,できるだけ、一人で仕事をする日が連続しないようにする。
あんまり何日も一人で集中して仕事を続けても、結局、効率がいいのは最初の一日だけです。あとは、ぼーっとしてしまうことが多いので、できるだけ、一人で何日も続けて仕事をしないように、スケジュールを調節しています。

2,たとえ、一人で仕事をするときでも、簡単な仕様書や工程表を作る。
自分で自分の労務管理をするには必須です。それに、自分だけで仕事をしていると、仕事が本当に前に進んでいるのかわかりにくくなることがあるんです。そういう不安を軽減するためにも、必須です。

3,労働時間をタイマーなどで計る。
次の30分〜1時間に何をするか決めて、時間を区切って仕事しています。一応、キッチンタイマーで時間をはかっています。その時間が終わったら、仕事が残っているかどうかに関係なく、原則として短時間の休憩を入れるようにしています。

最後に、これだけやっても、やっぱり一人で仕事しているとダレてくるんですね。というわけで、できるだけ早いうちに脱ノマドをしようと思っています。ノマドが向く人もいるんでしょうけれど、僕は、ノマドが向かないんですね。きっと、こういう人は結構多いんじゃないかと思います。

2013年5月29日水曜日

よく似た名前の薬

Facebookで流れてきたんだけれど、「医薬品の取り違えミスを防止するための薬名類似度の定量的指標の構築」という論文。

面白いんだけれど、この指標はイマイチかな。

よく似た名前の薬っていうのは、結構多くて、有名なところでは、サクシン(筋弛緩薬)とサクシゾン(炎症を抑える薬)とか、アマリール(糖尿病の薬)とアルマール(高血圧の薬)とかが混乱されやすい。両方共、取り違え事故につながったこともある(ちなみに、アルマールについては、あまりに紛らわしく取り違えが多いため、昨年、名称変更された)。

こういうよく似た名前の薬については、僕もしばしば、「どっちがどっちだっけ?」と、混乱する。
あと、字面は似ていないので不思議がられるのだけれど、ノルバスク(高血圧の薬)とビソルボン(痰をとる薬)とか、時々、一瞬わからなくなることがある。混乱する都度、アンチョコみたいので確かめているので、実際に間違えたことはないけれど。

この種の、混乱しやすいものについて、なんらかの指標があれば、
Googleの「もしかして」みたいのを電子カルテに実装することができるんじゃないか。

あと、患者が薬の名前をうろ覚えのことって結構あるんだよね。

「いま、なにか、ウチで処方したもの以外で薬とか飲んでますか?」
「あー、なんか飲んでる。ノルなんとかっていう名前で、錠剤で、確か、血圧の薬って言ってなかったっけかな?」
「ノルなんとか?薬の名前の分かるもの、何かありませんか?(薬の飲み合わせによってトラブルが発生することがあるので、一応、きちんと聞いておかなくちゃいけない)」
「うーん、持ってないなぁ。確か、カタカナ五文字で、最後が『ク』か『ス』だったような。」

こんなとき、うろ覚えの薬の名前で検索して、さらに、剤型(錠剤か、カプセルか、粉末か、とかみたいな)で絞り込んで、薬の正しい名前と薬の写真の一覧とかを表示してくれたら、すごく助かる。
スマホのアプリになっててくれたら、診察室だけじゃなくて往診時にも持っていけるから、より便利かな。

だれか、作らないかな。

こういう指標があれば、いろいろ面白いことできそうなんだけれど、リンクした論文の指標は、少し微妙な気もする。なんというか、薬の名前について、僕が似ていると感じる組み合わせと、この指標で高い値が出る組み合わせが、微妙に違う気がするんだよね。

2013年5月27日月曜日

医師をターゲットにしたウェブサービスでの医師免許のチェックについて

先日、自宅でボーッとテレビを見ていると、渡辺純一の「雲の階段」のドラマが放映されていた。

医師不足の僻地でやむを得ず医者の代わりに治療行為を行う主人公が、やがて、免許がないことを隠して医師として出世コースを歩みはじめ、そして、最後には、無免許医であることがバレて破綻する、そういう筋の小説である。

で、見てると、今回のテレビドラマ版では、厚生労働省の「医師等資格確認検索」のサービスを使って、ニセ医者であることがばれるという筋になっていた。

ウェブ検索で無免許医がバレるっていう設定は、今風といえば今風。
なんだけれど、このシステム、関係者の間では、欠陥が多くて信用できないという評価が一般的なように思う。
欠陥というのは、平たく言うと、検索に引っかからない医者が多いのだ(これについては、Yahoo知恵袋とか発言小町にもこういう質問とかこういう質問が上がっていた)。
さらに、検索して無事に該当があったとしても、そういう苗字と名前の医者がいるということが分かるだけで、同姓同名の医者を騙ったニセ医者がいたら、もう、それは、この検索システムではチェックできないわけで、なんとも、行政が作ったらしい中途半端なシステムだと思う。

なんで検索に引っかからない人が多いのか?

このシステムは、2年に一回医者自身が行う届出のデータを使って検索しているのだけれど、案外、この届出を忘れる医者が多いのである。まあ、多くの医者は多忙であるから、ついつい忘れてしまう、ということなんであろう。

かくいう私も、前回の届出時(約3年前)には届出を忘れて、システム上は「該当なし」の医者になってしまった。どうせ関係者はほとんど信用していないシステムなので、「該当なし」でも、実害はないのだけれど、なんとなく気持ち悪いので今回はちゃんと届出を行ったのである。でも、先ほど自分の名前を入力してみたところ、依然、「該当なし」である。もう届出してから半年ちかく経つのに、まだデータ更新してないのかな、気持ち悪いなぁ。

まあ、そういうわけで、現状では、オンラインで、医者が自分が医者であることを確実に証明するのは案外難しい。当然、オンライン上の自称医者について、ニセモノかホンモノかを識別することも困難なのである。

こういうアバウトなシステムを放置するからニセ医者が横行するんだろうと思うんだけれど、まあ、行政の怠慢ってのは、今に始まったことじゃないから、仕方がない。

今、個人的に困っているのは、そういうニセ医者による犯罪をどうやって防ぐか、みたいな話に比べると小さな問題で、タイトルに書いた、「医者をターゲットにしたウェブサービスでの免許のチェック」という問題なのだ。

つまり、ウェブで医者相手のサービスを行うときに、相手が正規の医者であることを確認したいことがある。そういう時、どうするのがいいだろうか、という問題。

たとえば、法律などで、相手が正規の医者や医療機関でないと販売できないことになっている商品というのがいくつかある。また、法律では特に規制がなくとも、正規の医者以外に売ってしまうと、少々危険だという商品もある。そういう商品を医者相手にネットで販売したいというケースがあるわけだ。
あるいは、医者のSNS(例えば、治療困難な病気の治療法について、医者同士で討論する場を提供するなどするわけだ)とか、医者向けの会員制ニュースサイトみたいのもある。この手のサイトは、通常は、医者向けにターゲットを絞った広告を打ちたいという製薬会社や医療機器メーカーなどからの広告料で収益を上げている。なので、サイト運営者としては、会員登録している数万人のユーザーたちについて、本当に免許を持っている医者なのだと説明出来なくては、スポンサーからサイト広告料をいただけなくなってしまうわけだ。

で、僕もしばしば、その手のサイトを使うのだけれど、免許のチェックの厳しいサイトからゆるいサイトまで、結構バラバラである。勤務先の病院名とか出身の医科大学の入力を要求されて、その後、勤務先病院に電話や郵便で確認するというサイトもあるし、「あなたは本当に医者ですか」みたいなフォームに「はい」とボタンを押したら、後はノーチェックというものもある。

いま、この手の医者向けサービスを作ろうとしている人から相談を受けているんだけれど、どうも、一番の悩みどころは、この、「免許のチェックをどうするのか」になりそうなのだ。

結局のところ、完全な免許のチェックはできないし、でも、まあ、ある程度厳しいチェックをすることで、完全ではないにせよ、そこそこニセ医者が登録することを避けることはできるはずである。でも、厳しいチェックをすればするほどコストがかかるのだ。そのあたり、どうするかというのが結構悩ましいわけだ。

以下、この問題についてのメモ。

医師免許のチェックが必要なサイトの分類

1,医師向けの有料ニュース配信
たとえば、医楽座など。ちょっと考えてみたけれど、ほとんど免許のチェックは必要無いような気がする。仮にユーザーにニセ医者が混じったとしても、サービス内容に問題が出るわけでもないし、ビジネスに問題が生じるわけでもない。自分で登録していないので、どういうチェックがあるのかも知らない。だれか医楽座のユーザーの方、教えて欲しい。

2,医師向けの物販系
具体的なサイトにはあえてリンクしない。たぶん、チェックの必要性は売るものの種類による。つまり、仮に、医者以外に商品を売ったとして、どれくら重要なトラブルが発生するか、によって、どれくらい厳しいチェックをするべきか変わってくる。それから、どういうつもりでビジネスをやってるのかにもよるだろう。つまり、仮に、ニセ医者に売ってしまうと、なんらかの事故が起こる可能性があるような商品を売るとしても、販売者は、自分は「ニセ医者に騙された被害者」だと主張して責任を回避することができるだろうから。
販売者としては、そういった事故を防ぐために、自社がどれほどのコストをかけていいか、冷静に計算するだろう。

3,無料のニュース配信
日経メディカルとか。多くは広告料をとって利益を上げている。ということは、広告主にユーザーの質について説明出来なくてはいけないだろう。自分の登録した範囲内では、ほとんどのニュースサイトは、サービス提供開始時点から、かなり厳しいチェックをしていたように思う。僕が日経メディカルに登録した時には、ユーザー登録時に、出身大学と勤務先病院を入力した。で、最初にログインする時に必要なパスワードは、勤務先の病院宛に郵送されてきた。
CBニュースなどは、広告料を得るビジネスという感じじゃなくて、人材派遣とか転職支援が本業みたいな感じで、どちらかというと、ニュースは、登録会員へのサービスとして流している感じなので、このカテゴリとは少し違う気がする。

4,無料のSNSなど
たとえば、m3とかメドピアとか。当然、広告収入でビジネスをしているわけで、3と同じように、ユーザーの質について、広告主に説明できなきゃいけないだろう。でも、昔は、3ほど厳しいチェックはしていないものが多かった気がする。だんだん、最近は厳しいチェックをするようになってきたかな。
ずいぶん昔のことで、ハッキリ覚えていないけれど、僕がm3に登録した時には、何もチェックらしいチェックはなかったような気がする。たぶん、これは仕方がない部分もある。3のニュース配信は、大手のメディア企業がスタートさせることが多いのに対して、SNSは資本力の小さい企業がスタートさせることが多いから、たぶん、コストがかかるチェックはできないことが多いんだと思う。大きな企業になってからのm3は、チェックが厳しくなったと聞いているけれど、たぶん、初期に乱発した質の悪いアカウントは、今後も、この会社のネックであり続けるんじゃないかと思う。後発の代表格のメドピアは、このチェックはきちんとしているらしい。たぶん、先行事例の失敗に学んだんじゃないかな。僕は、自分で登録したんじゃないのでよくわからないけれど。

5,無料ユーザーである医師に患者向けコンテンツを作成してもらい、そのコンテンツでビジネスをするタイプ
いくつか実例があるんだけれど、まだ、ビジネスとしては未知数かな。でも、これは、可能なビジネスだと思う。たぶん、やるとしたら、それなりに厳しいチェックが必要なんじゃないかと思う。

いくつかの免許チェックの方法(コストのかからない方法から)
0,全くチェックしない。
「あなたは本当に医者ですか?」なんていう質問とボタンを設置する。それだけ。

1,ユーザー登録時に、名前、勤務先、出身大学、専門、所属学会などを入力させる。
電話で勤務先に在籍確認などしなくても、入力を求めるだけで、ニセ医者の登録に対する相当の抑止力になるんじゃないかと思う。一応、該当の勤務先や学会が実在するかどうかくらいはチェックしてもいいかもしれない。また、その名前について、医師等検索サイトでチェックしてもいい。

2,すでに会員である医者から紹介させる。
要するに、招待制SNSのノリだ。SNSだったら、これはアリだと思う。

3,多くの医者が参加する団体のメールアドレスなどを持っていれば、登録してもらう。
たとえば、UMINみたいな団体のアドレスを持っていれば、それを登録してもらう。これも、完全な方法ではないけれど、強い抑止力になると思う。

4,ユーザー登録時に、医師免許証をスキャンして画像データとして送信させる。
こういう登録方法のサイトを見たことがある。決定的な方法だけれど、登録するユーザーとしては面倒だ。たかがSNSに参加するために、そんな面倒なことをするユーザーなんて、滅多にいないんじゃないかと思う。僕は、自分の医師免許証については、スキャンして、jpegとpdfの形式でDropboxにおいてある。だから、そういう僕にとってはそんなに面倒じゃないはずなんだけれど、それでも、このサイトには登録しなかった。面倒だから。

5,勤務先の病院を入力させて、当該の病院に電話で在籍確認するか、郵送で初期パスワードを送るか、する。
これも、強力な方法。でも、面倒だし、サイト運営者としてはコストが高くつく方法だと思う。

たぶん、ゆるいサイトであれば、1,3の方法と、2,の方法を選べるようにするのが一番楽だろうと思う。つまり、信頼できるユーザーからの紹介と保証があれば、運営側はノーチェック。紹介なしの新規ユーザーについては、細かな入力をさせて、運営側で簡単なチェックする。というような。

肘部管症候群

この半年くらい、右手小指から薬指にかけての痺れに悩まされてきました。
おそらく肘部管症候群だとわかっていたのですが、多忙のため整形外科にかかる時間が取れず、そのまま、痺れているままで放置していました。
先日、Facebookで、このことを書き込んだら、知人の先生から、UpToDateに「夜眠るとき、痺れている方の手の肘をタオルで巻いて寝るといい」と記載があるとおしえてもらい、実践してみると、一晩でほとんど症状がなくなり、一週間もたたないうちに、完全に無症状になりました。

タオルで肘を巻くことで、寝ている間、肘関節を強制的に伸ばしたままにしておくんですね。

あまりに簡単な方法で治ってしまうことに驚いたのですが、実は、もう一つ、気がついたことがありました。
僕は、寝ている間、ものすごく強く右肘を曲げてアゴの下に右手のひらを当てた姿勢になるクセがあったみたいなんです。
タオルで巻かれた肘を無理に強く曲げようとすると、タオルがきつくて眼が醒めてしまうのですけれど、そういう姿勢でタオルがきつくて眼が醒めてしまうことが何度かあったんですね。で、タオルを巻いているうちにその妙なクセが矯正されて、その結果、手の痺れもなくなってしまいました。

肘部管症候群は、肘の肘部管というところを通る神経が、その肘部管が狭くなっているなどの理由で圧迫されて、そのために痺れが起こる病気です。なんですけれど、その、肘部管が狭くなっているというのは、レントゲンなどで見ても良く分からないことが圧倒的に多いそうです。学生時代にそう習って、えらく不思議なことだなぁ、と思ったことを思い出しました。大部分の患者では、実は本当は肘部管が狭くなっていないならば、どうして神経が圧迫されるのだろう?と。


で、自分でこれに出くわして、あ、これは、寝ている時の妙な姿勢でも起こるものなのかもしれないな、これなら、レントゲンに写ったりはしないわな、と、思った次第です。


専門外なので、今度、整外の先生にあった時に、この推測について、聞いてみようと思っています。


2013年5月6日月曜日

医者の世界から見るワークシフトの未来

仕事で会う、特に自分より若い人から、「専門知識を身につけて、組織に縛られない生き方」をしたいとか、「ノマド的な生き方」をしたいとか、そういう話を聞かされることが多くなりました。

僕は、たいてい、それを少し複雑な気持ちで聞いています。もちろん、そういう生き方は、それはそれで素晴らしいと思うのだけれど、彼が憧れながら思っているよりも、そういうノマド的専門家ってのは大変なんじゃないかな、本当に彼にできるのかな、とも思うわけです。とはいえ、そういう、「組織に縛られない専門家」というのは、これから増えていくんだろうな、という実感も持っています。

最近、「ワークシフト」という本を読みました。一読して、この世界で書かれている未来の仕事のスタイルは、医者の世界での現在の仕事のスタイルに非常に近いな、という印象を持ちました。

医者の世界での働きかたのスタイルは、普通の人たちの未来の働きかたの、特に、「ノマド的な、組織に縛られない専門家」のモデルになりうるのかも、別の言い方で言いますと、医者の世界は「すすんでいる」のかも、と思います。

そう思ったので、「医者の世界から見るワークシフトの未来」について、書いて見ることにしました。

1,あなたが高度な専門家になると、まず間違いなく、あなたの環境はブラックになる。

あなたが突出した専門知識を持つようになって、職場に、あなた以外には解決困難な問題が増えてきたとします。

そうすると、職場側は、あなたに配慮しなくてはならないことが増えるかもしれません。そうだとしたら、給与は上がり、残業は少なくなり、家族と過ごすプライベートの時間も増えるのでしょうか?

医師の世界が経験したことからすると、残念ながら、そうはいかないと思います。あなた以外には困難な仕事が増えるという事は、あなたの責任が増え、あなたの労働時間が増えるという事です。

だって、自分がいなくて困る同僚や患者を見ながら、自分一人だけ休暇を取ることなんてできないでしょう?

もし、あなたが、一人だけ休暇をとれるような人ならば、たぶん、あなたは同僚からの信用を失うでしょう。専門知識を持った人が集まって行う仕事というのは、当然、専門家同士の協力が必要ですから、周囲の他の専門家から信用を得られない人は、仕事を続けられません。

さらに、もし、あなたが来年以降も専門家であり続けようとしたら、自分の専門知識を維持し続けるために、仕事が終わった後の時間を費やして勉強し続けなくてはなりません。進歩の早い時代です。努力し続けなければ、あなたの専門知識は簡単に古びてしまうからです。

ですから、あなたは、ハードワーカーにならざるを得ません。

もちろん、責任や労働時間が増えるにつれて給与は多少上がるでしょう。でも、おそらく、それは、労働時間と責任に見合うほどのものではありません。

一般に、医師の世界では、高度な専門家ほど、労働時間は長くなります。そして、賃金は、時給に換算すると、高度な専門家ほど低いのが一般的傾向ではないかと思います。彼らは、多少大げさな言い方で言いますと、自分にしかできない仕事をするという使命感と情熱で働いているのです。

あなたが高度な専門家になり、あなた以外には困難な仕事が増えるほど、あなたの労働環境はブラックになります。
多くの医師は、普通のサラリーマン以上に「社畜」です。

2,しかし、どんな専門家でも、かわりはいる。

前項で、僕は、「あなた以外には困難な仕事」といいました。でも、あなた以外には困難な仕事でも、必ず、あなた以外にも、それができる人は存在します。世界は広いのです。どんな高度な技術でも、できる人は必ず見つかります。

職場と折り合いが悪くなって転職したことのある医者を、何人か知っています。そんなのは、普通のサラリーマンの世界でも、よくあることです。
そういう医者の中には、
「俺がいなくなったら、みんな困るくせに!」
「この職場は、俺の犠牲のおかげで動いているのに!」
「俺の代わりなんていないのに!」
そういってやめる人が、時々います。
気持ちはよくわかります。

確かに、急に辞められると、多くの職場が困ります。でも、しばらくすると、ほとんどの場合、職場は、彼と同じくらいに優秀な、彼と同じくらいに自己犠牲の精神を持った別の医者を探してきます。

情報化社会の現在、特定の人しか知らない秘伝の技術なんてものは、ほとんどありません。あなたがよほど突出した天才でなければ、必ず代わりはいます。

今後、縛られない生き方をしたい専門家が増えれば、その職場も、気難しい専門家を雇うことに慣れていきます。そういう職場は、間違いなく、こういう気難しい専門家の代わりを探しだすノウハウも磨いていくでしょう。

専門家になるという事は職場に対する交渉力を手に入れるという事でもあります。でも、その交渉力には限界があるのです。無理を通すために辞職をちらつかせて交渉をするのは、たいていはやっぱり無理です。

あなたの代わりは、常にいると思ってください。これは、必ずしも悲観するべきことではありません。あなたが普通に仕事をしていれば、あなたの仕事を引き継ぐひとは必ずいるという事でもあります。引き継ぐ人がいるという事は、あなたの仕事の責任がどんなに重たくとも、その責任には上限があるという事でもあります。気楽にいきましょう。

3,代わりがいるとはいえ、辞職するときには迷惑をかけないように振る舞いましょう。

あなたの代わりは必ずいるとはいえ、医者が別の医療機関に移るときは、やはり辞められる職場は大変です。代わりの医者を探さなくてはなりませんし、代わりの医者が見つかっていたとしても、患者や治療について、たくさんの情報の引継ぎをしなくてはいけません。この引き継ぎ資料の作成は大変で、多くの医者は、辞職(異動)前後には、残業時間が極端に増えることが多いです。

どうせやめる職場の都合に縛られる必要はない、なんて考えはやめましょう。同じ分野の専門家を続ける限り、学会や、様々な集まりで、別れた職場の医者とも顔を合わせなくてはいけませんし、同じ分野の専門家同士、なにかと協力しあわなくては仕事にならないのです。専門家の世界は狭いのです。一旦、悪い評判がつけば、どこの職場に移ったとしても仕事に差し支えます。

ただ、辞職間際というのは、どうしても余裕がないことも多いです。どうしても余裕がなければ、時には迷惑をかけてしまうのもやむを得ないかもしれません。後で迷惑をかけた人に会ったら謝りましょう。その時やむを得なかったことがわかれば、謝れば、たいていは相手は許してくれます。なぜなら、あなたが同じ分野の専門家である限り、相手にとっても、今後のあなたの協力が必要だからです。

結論

「ワークシフト」によると、現在起こっている働き方の変化をまとめると、「ゼネラリストから連続スペシャリストへ」「孤独な競争から協力して起こすイノベーションへ」「大量消費から情熱を傾けられる経験へ」だそうです。

この本で書かれている、未来の社会の働き方は、現在の医者の働き方によく似ていると思います。

そこでは、「職場に縛られない生き方」が実現しますが、現在の会社組織中心とは別の倫理観に従って、今以上にハードワークをしなくてはならないのです。そういう生き方は、今、「縛られない生き方」みたいなことを言っている人たちが想像しているより、厳しい部分も多いです。
そこには、専門家個人の努力と、専門家同士の協力が必要です。情熱をもってそういう生き方ができる人ならば、それはそれで素晴らしいと思うんですが、誰にでも簡単にできるものではないと思います。