2014年6月9日月曜日

「お薬手帳」と「お薬手帳を断ること」について思うこと

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「お薬手帳を断ろう」という動きがあるようです。

僕としては、この「お薬手帳」について、いろいろ思っていたこともあるので、この機会に、ちょっとこれについて書こうと思います。

薬というのは、飲み合わせ、つまり、「この薬を飲んでいたら、こっちの薬は飲むべきではない」というような組み合わせがあります。また、人によっては、特定の薬でアレルギーや有害な副作用が起こりやすいということもあります(過去に、そういうトラブルの経験のある人は、その記録は非常に大切です。記録があれば、同じトラブルを繰り返すことが避けられるからです。)。また、これまでどういう薬を飲んできたか、ということが病気の診断のために重要な情報になることもあります。ですので、患者が過去にどういう薬を飲んできたか、また、今、どういう薬を飲んでいるか、ということがわかることは、処方する医師にとっても、薬を出す薬剤師にとっても、もちろん、患者自身の健康にとっても、非常に大切なことです。

僕は、お薬手帳というのは、そういった情報を、患者自身に管理してもらうために作られたツールだと思っています。こういった情報は処方する医者にとって非常に大切ですので、僕は、複数の病院や診療書にかかっている患者については、診察時、必ず、お薬手帳(もしくは、その代用品、後述します)を見せてもらうようにしています。

ところが、そのお薬手帳の情報なんですが、僕自身は、正直のところ、あんまり信用できないと感じています。
というのは、
1,お薬手帳にシールを貼るのを忘れている人が多い。
2,お薬手帳を受診時に忘れてきたりする人も多い(そうなると、シールを貼り忘れたり、お薬手帳を再発行することも多くなりますから、情報が分散してしまいます)。
3,お薬手帳を紛失する人が多い。

こういうことが多くなると、処方する医者としては、お薬手帳を見せてもらっても、そこにある情報だけでは、これまでどういう薬を飲んでいたか完全に網羅できていない可能性を、常に考えなくてはならないんですね。モレがある可能性が高い履歴情報をあまり頼りにしすぎるのは危険です。これが、僕がお薬手帳をあんまり信用できないと感じている、という意味です。

ですので、僕としては、今回のお薬手帳を断る動き、それ自体は悪いとは思いません。ただ、お薬手帳を断る人も、自分が処方された薬の名前と量が、きちんとわかるように記録を取るようにしてください。メモ書きでもかまいませんし、薬袋や薬の説明書きの紙をとっておいてもかまいませんし、それらを携帯電話などで写真にとっておいてもかまいません。もちろん、お薬手帳を持ち歩いて頂いても、かまいません。

逆に言えば、もし、きちんと薬の履歴情報がわかるようにさえしていただければ、お薬手帳を持っていても、いなくても、どちらでも構わないと思ってます。

さて、お薬手帳の代わりに、僕自身が自分の患者に薦めているのは、受診した後に、お薬手帳に貼るシールか、医者からもらった処方箋を携帯電話で写真をとって残しておくことです。
しょっちゅう病院にかかる人であればともかく、半年に一回程度しか受診しない人の場合、かなりの確率で、お薬手帳を紛失します。また、受診するときに、手帳を忘れてくる人も多いです。しかし、最近は、携帯電話を忘れて外出する人はあまりいません。いまどきのスマートフォンであれば、機種変更しても写真などは同期できますから、スマートフォンは、履歴を残すには丁度いい端末だと思っています。

ちなみに、薬歴管理のためのスマホアプリなどもたくさん出ていますが、そういうものは、あまりおすすめしません。どうせ、複雑な機能などは必要ないことが多いですし、そういうアプリは、機種変更時になどにデータを移行するのも面倒です。薬の名前と量がわかる写真さえ、きちんと保管できれば十分です。

ご参考になれば。

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