2012年11月18日日曜日

診断機器としてのスマートフォン

昨日、診療時間のかなり遅くになってから、副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)が疑われた患者が来院した。
その子の母親が副鼻腔炎を心配していて、で、たしかに、僕の印象(「診察した医者の印象」というのは、検査などと比べても馬鹿にならないのだ)としても、副鼻腔炎っぽい。
でも、その時には、それを確かめるための検査や診察のための機械などは、手元になかったのだ。なぜか、いつも使っているペンライトすら電池切れに近い状態(本当に用意の悪い診療所なのだ。まあ、土曜日だからってのもあるんだけど)。

とりあえず、iPhoneの懐中電灯アプリで照らして咽頭を見ると、膿性の後鼻漏がある(つまり、黄色っぽい鼻水が、喉に落ちてきて、ベッタリとついている状態だったのだ)。やはり、それっぽい。

うーむ。ここには検査の機械なんてないし、僕は耳鼻科医ではないし、とりあえず耳鼻科に受診してもらうのがいいかな、と思ったのだけれど、なんせ、土曜日の午後のことだ。別の医者を受診しろっていっても、母親もなんとなく渋る感じ。
で、ちょっと思いついてiPhoneの懐中電灯アプリで、transillumination testをやってみた。

transillumination testっていうのは、鼻の横辺りの皮膚に強いライトを当てながら、口の中を覗きこむ診察方法だ。鼻の横辺りの骨も口の中の天井部分の骨も、非常に薄っぺらい骨なので、鼻の横に強い光を当ててやれば、副鼻腔の中の様子を、影絵みたいに、口の天井に映して見ることができる。

ふむ。なるほど。これはかなりのものだ。

スマホのライトってのは、それくらいのことができる程度には強力なライトなのだ、と思った。

結局、やはり副鼻腔炎が強く疑われるし、とりあえずそれ用の薬を出しておいて、それで、月曜には耳鼻科に行けって言って帰したんだけれど、あとで考えてみると、あれで、ほぼ確定診断になっているんじゃないかな、と思えてきた。

少なくとも、かなり高い確率で、副鼻腔炎と言えるまで証拠を集められたんじゃないかと思う。(参考:http://rockymuku.sakura.ne.jp/zibika/fukubikuuennnosinndann.pdf

以前、iPodを聴診器が割りに使う話があって、一時期試してみていたんだけれど、今のスマホの音質は、普通の聴診器よりも遥かにいいと思う。

というわけで、スマートフォンを万能簡易診察機器として使う、みたいな話を少し集めてみたいな、と思っている。案外、日常診療に使えるんじゃないか、こいつ。

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