2013年5月29日水曜日

よく似た名前の薬

Facebookで流れてきたんだけれど、「医薬品の取り違えミスを防止するための薬名類似度の定量的指標の構築」という論文。

面白いんだけれど、この指標はイマイチかな。

よく似た名前の薬っていうのは、結構多くて、有名なところでは、サクシン(筋弛緩薬)とサクシゾン(炎症を抑える薬)とか、アマリール(糖尿病の薬)とアルマール(高血圧の薬)とかが混乱されやすい。両方共、取り違え事故につながったこともある(ちなみに、アルマールについては、あまりに紛らわしく取り違えが多いため、昨年、名称変更された)。

こういうよく似た名前の薬については、僕もしばしば、「どっちがどっちだっけ?」と、混乱する。
あと、字面は似ていないので不思議がられるのだけれど、ノルバスク(高血圧の薬)とビソルボン(痰をとる薬)とか、時々、一瞬わからなくなることがある。混乱する都度、アンチョコみたいので確かめているので、実際に間違えたことはないけれど。

この種の、混乱しやすいものについて、なんらかの指標があれば、
Googleの「もしかして」みたいのを電子カルテに実装することができるんじゃないか。

あと、患者が薬の名前をうろ覚えのことって結構あるんだよね。

「いま、なにか、ウチで処方したもの以外で薬とか飲んでますか?」
「あー、なんか飲んでる。ノルなんとかっていう名前で、錠剤で、確か、血圧の薬って言ってなかったっけかな?」
「ノルなんとか?薬の名前の分かるもの、何かありませんか?(薬の飲み合わせによってトラブルが発生することがあるので、一応、きちんと聞いておかなくちゃいけない)」
「うーん、持ってないなぁ。確か、カタカナ五文字で、最後が『ク』か『ス』だったような。」

こんなとき、うろ覚えの薬の名前で検索して、さらに、剤型(錠剤か、カプセルか、粉末か、とかみたいな)で絞り込んで、薬の正しい名前と薬の写真の一覧とかを表示してくれたら、すごく助かる。
スマホのアプリになっててくれたら、診察室だけじゃなくて往診時にも持っていけるから、より便利かな。

だれか、作らないかな。

こういう指標があれば、いろいろ面白いことできそうなんだけれど、リンクした論文の指標は、少し微妙な気もする。なんというか、薬の名前について、僕が似ていると感じる組み合わせと、この指標で高い値が出る組み合わせが、微妙に違う気がするんだよね。

2013年5月27日月曜日

医師をターゲットにしたウェブサービスでの医師免許のチェックについて

先日、自宅でボーッとテレビを見ていると、渡辺純一の「雲の階段」のドラマが放映されていた。

医師不足の僻地でやむを得ず医者の代わりに治療行為を行う主人公が、やがて、免許がないことを隠して医師として出世コースを歩みはじめ、そして、最後には、無免許医であることがバレて破綻する、そういう筋の小説である。

で、見てると、今回のテレビドラマ版では、厚生労働省の「医師等資格確認検索」のサービスを使って、ニセ医者であることがばれるという筋になっていた。

ウェブ検索で無免許医がバレるっていう設定は、今風といえば今風。
なんだけれど、このシステム、関係者の間では、欠陥が多くて信用できないという評価が一般的なように思う。
欠陥というのは、平たく言うと、検索に引っかからない医者が多いのだ(これについては、Yahoo知恵袋とか発言小町にもこういう質問とかこういう質問が上がっていた)。
さらに、検索して無事に該当があったとしても、そういう苗字と名前の医者がいるということが分かるだけで、同姓同名の医者を騙ったニセ医者がいたら、もう、それは、この検索システムではチェックできないわけで、なんとも、行政が作ったらしい中途半端なシステムだと思う。

なんで検索に引っかからない人が多いのか?

このシステムは、2年に一回医者自身が行う届出のデータを使って検索しているのだけれど、案外、この届出を忘れる医者が多いのである。まあ、多くの医者は多忙であるから、ついつい忘れてしまう、ということなんであろう。

かくいう私も、前回の届出時(約3年前)には届出を忘れて、システム上は「該当なし」の医者になってしまった。どうせ関係者はほとんど信用していないシステムなので、「該当なし」でも、実害はないのだけれど、なんとなく気持ち悪いので今回はちゃんと届出を行ったのである。でも、先ほど自分の名前を入力してみたところ、依然、「該当なし」である。もう届出してから半年ちかく経つのに、まだデータ更新してないのかな、気持ち悪いなぁ。

まあ、そういうわけで、現状では、オンラインで、医者が自分が医者であることを確実に証明するのは案外難しい。当然、オンライン上の自称医者について、ニセモノかホンモノかを識別することも困難なのである。

こういうアバウトなシステムを放置するからニセ医者が横行するんだろうと思うんだけれど、まあ、行政の怠慢ってのは、今に始まったことじゃないから、仕方がない。

今、個人的に困っているのは、そういうニセ医者による犯罪をどうやって防ぐか、みたいな話に比べると小さな問題で、タイトルに書いた、「医者をターゲットにしたウェブサービスでの免許のチェック」という問題なのだ。

つまり、ウェブで医者相手のサービスを行うときに、相手が正規の医者であることを確認したいことがある。そういう時、どうするのがいいだろうか、という問題。

たとえば、法律などで、相手が正規の医者や医療機関でないと販売できないことになっている商品というのがいくつかある。また、法律では特に規制がなくとも、正規の医者以外に売ってしまうと、少々危険だという商品もある。そういう商品を医者相手にネットで販売したいというケースがあるわけだ。
あるいは、医者のSNS(例えば、治療困難な病気の治療法について、医者同士で討論する場を提供するなどするわけだ)とか、医者向けの会員制ニュースサイトみたいのもある。この手のサイトは、通常は、医者向けにターゲットを絞った広告を打ちたいという製薬会社や医療機器メーカーなどからの広告料で収益を上げている。なので、サイト運営者としては、会員登録している数万人のユーザーたちについて、本当に免許を持っている医者なのだと説明出来なくては、スポンサーからサイト広告料をいただけなくなってしまうわけだ。

で、僕もしばしば、その手のサイトを使うのだけれど、免許のチェックの厳しいサイトからゆるいサイトまで、結構バラバラである。勤務先の病院名とか出身の医科大学の入力を要求されて、その後、勤務先病院に電話や郵便で確認するというサイトもあるし、「あなたは本当に医者ですか」みたいなフォームに「はい」とボタンを押したら、後はノーチェックというものもある。

いま、この手の医者向けサービスを作ろうとしている人から相談を受けているんだけれど、どうも、一番の悩みどころは、この、「免許のチェックをどうするのか」になりそうなのだ。

結局のところ、完全な免許のチェックはできないし、でも、まあ、ある程度厳しいチェックをすることで、完全ではないにせよ、そこそこニセ医者が登録することを避けることはできるはずである。でも、厳しいチェックをすればするほどコストがかかるのだ。そのあたり、どうするかというのが結構悩ましいわけだ。

以下、この問題についてのメモ。

医師免許のチェックが必要なサイトの分類

1,医師向けの有料ニュース配信
たとえば、医楽座など。ちょっと考えてみたけれど、ほとんど免許のチェックは必要無いような気がする。仮にユーザーにニセ医者が混じったとしても、サービス内容に問題が出るわけでもないし、ビジネスに問題が生じるわけでもない。自分で登録していないので、どういうチェックがあるのかも知らない。だれか医楽座のユーザーの方、教えて欲しい。

2,医師向けの物販系
具体的なサイトにはあえてリンクしない。たぶん、チェックの必要性は売るものの種類による。つまり、仮に、医者以外に商品を売ったとして、どれくら重要なトラブルが発生するか、によって、どれくらい厳しいチェックをするべきか変わってくる。それから、どういうつもりでビジネスをやってるのかにもよるだろう。つまり、仮に、ニセ医者に売ってしまうと、なんらかの事故が起こる可能性があるような商品を売るとしても、販売者は、自分は「ニセ医者に騙された被害者」だと主張して責任を回避することができるだろうから。
販売者としては、そういった事故を防ぐために、自社がどれほどのコストをかけていいか、冷静に計算するだろう。

3,無料のニュース配信
日経メディカルとか。多くは広告料をとって利益を上げている。ということは、広告主にユーザーの質について説明出来なくてはいけないだろう。自分の登録した範囲内では、ほとんどのニュースサイトは、サービス提供開始時点から、かなり厳しいチェックをしていたように思う。僕が日経メディカルに登録した時には、ユーザー登録時に、出身大学と勤務先病院を入力した。で、最初にログインする時に必要なパスワードは、勤務先の病院宛に郵送されてきた。
CBニュースなどは、広告料を得るビジネスという感じじゃなくて、人材派遣とか転職支援が本業みたいな感じで、どちらかというと、ニュースは、登録会員へのサービスとして流している感じなので、このカテゴリとは少し違う気がする。

4,無料のSNSなど
たとえば、m3とかメドピアとか。当然、広告収入でビジネスをしているわけで、3と同じように、ユーザーの質について、広告主に説明できなきゃいけないだろう。でも、昔は、3ほど厳しいチェックはしていないものが多かった気がする。だんだん、最近は厳しいチェックをするようになってきたかな。
ずいぶん昔のことで、ハッキリ覚えていないけれど、僕がm3に登録した時には、何もチェックらしいチェックはなかったような気がする。たぶん、これは仕方がない部分もある。3のニュース配信は、大手のメディア企業がスタートさせることが多いのに対して、SNSは資本力の小さい企業がスタートさせることが多いから、たぶん、コストがかかるチェックはできないことが多いんだと思う。大きな企業になってからのm3は、チェックが厳しくなったと聞いているけれど、たぶん、初期に乱発した質の悪いアカウントは、今後も、この会社のネックであり続けるんじゃないかと思う。後発の代表格のメドピアは、このチェックはきちんとしているらしい。たぶん、先行事例の失敗に学んだんじゃないかな。僕は、自分で登録したんじゃないのでよくわからないけれど。

5,無料ユーザーである医師に患者向けコンテンツを作成してもらい、そのコンテンツでビジネスをするタイプ
いくつか実例があるんだけれど、まだ、ビジネスとしては未知数かな。でも、これは、可能なビジネスだと思う。たぶん、やるとしたら、それなりに厳しいチェックが必要なんじゃないかと思う。

いくつかの免許チェックの方法(コストのかからない方法から)
0,全くチェックしない。
「あなたは本当に医者ですか?」なんていう質問とボタンを設置する。それだけ。

1,ユーザー登録時に、名前、勤務先、出身大学、専門、所属学会などを入力させる。
電話で勤務先に在籍確認などしなくても、入力を求めるだけで、ニセ医者の登録に対する相当の抑止力になるんじゃないかと思う。一応、該当の勤務先や学会が実在するかどうかくらいはチェックしてもいいかもしれない。また、その名前について、医師等検索サイトでチェックしてもいい。

2,すでに会員である医者から紹介させる。
要するに、招待制SNSのノリだ。SNSだったら、これはアリだと思う。

3,多くの医者が参加する団体のメールアドレスなどを持っていれば、登録してもらう。
たとえば、UMINみたいな団体のアドレスを持っていれば、それを登録してもらう。これも、完全な方法ではないけれど、強い抑止力になると思う。

4,ユーザー登録時に、医師免許証をスキャンして画像データとして送信させる。
こういう登録方法のサイトを見たことがある。決定的な方法だけれど、登録するユーザーとしては面倒だ。たかがSNSに参加するために、そんな面倒なことをするユーザーなんて、滅多にいないんじゃないかと思う。僕は、自分の医師免許証については、スキャンして、jpegとpdfの形式でDropboxにおいてある。だから、そういう僕にとってはそんなに面倒じゃないはずなんだけれど、それでも、このサイトには登録しなかった。面倒だから。

5,勤務先の病院を入力させて、当該の病院に電話で在籍確認するか、郵送で初期パスワードを送るか、する。
これも、強力な方法。でも、面倒だし、サイト運営者としてはコストが高くつく方法だと思う。

たぶん、ゆるいサイトであれば、1,3の方法と、2,の方法を選べるようにするのが一番楽だろうと思う。つまり、信頼できるユーザーからの紹介と保証があれば、運営側はノーチェック。紹介なしの新規ユーザーについては、細かな入力をさせて、運営側で簡単なチェックする。というような。

肘部管症候群

この半年くらい、右手小指から薬指にかけての痺れに悩まされてきました。
おそらく肘部管症候群だとわかっていたのですが、多忙のため整形外科にかかる時間が取れず、そのまま、痺れているままで放置していました。
先日、Facebookで、このことを書き込んだら、知人の先生から、UpToDateに「夜眠るとき、痺れている方の手の肘をタオルで巻いて寝るといい」と記載があるとおしえてもらい、実践してみると、一晩でほとんど症状がなくなり、一週間もたたないうちに、完全に無症状になりました。

タオルで肘を巻くことで、寝ている間、肘関節を強制的に伸ばしたままにしておくんですね。

あまりに簡単な方法で治ってしまうことに驚いたのですが、実は、もう一つ、気がついたことがありました。
僕は、寝ている間、ものすごく強く右肘を曲げてアゴの下に右手のひらを当てた姿勢になるクセがあったみたいなんです。
タオルで巻かれた肘を無理に強く曲げようとすると、タオルがきつくて眼が醒めてしまうのですけれど、そういう姿勢でタオルがきつくて眼が醒めてしまうことが何度かあったんですね。で、タオルを巻いているうちにその妙なクセが矯正されて、その結果、手の痺れもなくなってしまいました。

肘部管症候群は、肘の肘部管というところを通る神経が、その肘部管が狭くなっているなどの理由で圧迫されて、そのために痺れが起こる病気です。なんですけれど、その、肘部管が狭くなっているというのは、レントゲンなどで見ても良く分からないことが圧倒的に多いそうです。学生時代にそう習って、えらく不思議なことだなぁ、と思ったことを思い出しました。大部分の患者では、実は本当は肘部管が狭くなっていないならば、どうして神経が圧迫されるのだろう?と。


で、自分でこれに出くわして、あ、これは、寝ている時の妙な姿勢でも起こるものなのかもしれないな、これなら、レントゲンに写ったりはしないわな、と、思った次第です。


専門外なので、今度、整外の先生にあった時に、この推測について、聞いてみようと思っています。


2013年5月6日月曜日

医者の世界から見るワークシフトの未来

仕事で会う、特に自分より若い人から、「専門知識を身につけて、組織に縛られない生き方」をしたいとか、「ノマド的な生き方」をしたいとか、そういう話を聞かされることが多くなりました。

僕は、たいてい、それを少し複雑な気持ちで聞いています。もちろん、そういう生き方は、それはそれで素晴らしいと思うのだけれど、彼が憧れながら思っているよりも、そういうノマド的専門家ってのは大変なんじゃないかな、本当に彼にできるのかな、とも思うわけです。とはいえ、そういう、「組織に縛られない専門家」というのは、これから増えていくんだろうな、という実感も持っています。

最近、「ワークシフト」という本を読みました。一読して、この世界で書かれている未来の仕事のスタイルは、医者の世界での現在の仕事のスタイルに非常に近いな、という印象を持ちました。

医者の世界での働きかたのスタイルは、普通の人たちの未来の働きかたの、特に、「ノマド的な、組織に縛られない専門家」のモデルになりうるのかも、別の言い方で言いますと、医者の世界は「すすんでいる」のかも、と思います。

そう思ったので、「医者の世界から見るワークシフトの未来」について、書いて見ることにしました。

1,あなたが高度な専門家になると、まず間違いなく、あなたの環境はブラックになる。

あなたが突出した専門知識を持つようになって、職場に、あなた以外には解決困難な問題が増えてきたとします。

そうすると、職場側は、あなたに配慮しなくてはならないことが増えるかもしれません。そうだとしたら、給与は上がり、残業は少なくなり、家族と過ごすプライベートの時間も増えるのでしょうか?

医師の世界が経験したことからすると、残念ながら、そうはいかないと思います。あなた以外には困難な仕事が増えるという事は、あなたの責任が増え、あなたの労働時間が増えるという事です。

だって、自分がいなくて困る同僚や患者を見ながら、自分一人だけ休暇を取ることなんてできないでしょう?

もし、あなたが、一人だけ休暇をとれるような人ならば、たぶん、あなたは同僚からの信用を失うでしょう。専門知識を持った人が集まって行う仕事というのは、当然、専門家同士の協力が必要ですから、周囲の他の専門家から信用を得られない人は、仕事を続けられません。

さらに、もし、あなたが来年以降も専門家であり続けようとしたら、自分の専門知識を維持し続けるために、仕事が終わった後の時間を費やして勉強し続けなくてはなりません。進歩の早い時代です。努力し続けなければ、あなたの専門知識は簡単に古びてしまうからです。

ですから、あなたは、ハードワーカーにならざるを得ません。

もちろん、責任や労働時間が増えるにつれて給与は多少上がるでしょう。でも、おそらく、それは、労働時間と責任に見合うほどのものではありません。

一般に、医師の世界では、高度な専門家ほど、労働時間は長くなります。そして、賃金は、時給に換算すると、高度な専門家ほど低いのが一般的傾向ではないかと思います。彼らは、多少大げさな言い方で言いますと、自分にしかできない仕事をするという使命感と情熱で働いているのです。

あなたが高度な専門家になり、あなた以外には困難な仕事が増えるほど、あなたの労働環境はブラックになります。
多くの医師は、普通のサラリーマン以上に「社畜」です。

2,しかし、どんな専門家でも、かわりはいる。

前項で、僕は、「あなた以外には困難な仕事」といいました。でも、あなた以外には困難な仕事でも、必ず、あなた以外にも、それができる人は存在します。世界は広いのです。どんな高度な技術でも、できる人は必ず見つかります。

職場と折り合いが悪くなって転職したことのある医者を、何人か知っています。そんなのは、普通のサラリーマンの世界でも、よくあることです。
そういう医者の中には、
「俺がいなくなったら、みんな困るくせに!」
「この職場は、俺の犠牲のおかげで動いているのに!」
「俺の代わりなんていないのに!」
そういってやめる人が、時々います。
気持ちはよくわかります。

確かに、急に辞められると、多くの職場が困ります。でも、しばらくすると、ほとんどの場合、職場は、彼と同じくらいに優秀な、彼と同じくらいに自己犠牲の精神を持った別の医者を探してきます。

情報化社会の現在、特定の人しか知らない秘伝の技術なんてものは、ほとんどありません。あなたがよほど突出した天才でなければ、必ず代わりはいます。

今後、縛られない生き方をしたい専門家が増えれば、その職場も、気難しい専門家を雇うことに慣れていきます。そういう職場は、間違いなく、こういう気難しい専門家の代わりを探しだすノウハウも磨いていくでしょう。

専門家になるという事は職場に対する交渉力を手に入れるという事でもあります。でも、その交渉力には限界があるのです。無理を通すために辞職をちらつかせて交渉をするのは、たいていはやっぱり無理です。

あなたの代わりは、常にいると思ってください。これは、必ずしも悲観するべきことではありません。あなたが普通に仕事をしていれば、あなたの仕事を引き継ぐひとは必ずいるという事でもあります。引き継ぐ人がいるという事は、あなたの仕事の責任がどんなに重たくとも、その責任には上限があるという事でもあります。気楽にいきましょう。

3,代わりがいるとはいえ、辞職するときには迷惑をかけないように振る舞いましょう。

あなたの代わりは必ずいるとはいえ、医者が別の医療機関に移るときは、やはり辞められる職場は大変です。代わりの医者を探さなくてはなりませんし、代わりの医者が見つかっていたとしても、患者や治療について、たくさんの情報の引継ぎをしなくてはいけません。この引き継ぎ資料の作成は大変で、多くの医者は、辞職(異動)前後には、残業時間が極端に増えることが多いです。

どうせやめる職場の都合に縛られる必要はない、なんて考えはやめましょう。同じ分野の専門家を続ける限り、学会や、様々な集まりで、別れた職場の医者とも顔を合わせなくてはいけませんし、同じ分野の専門家同士、なにかと協力しあわなくては仕事にならないのです。専門家の世界は狭いのです。一旦、悪い評判がつけば、どこの職場に移ったとしても仕事に差し支えます。

ただ、辞職間際というのは、どうしても余裕がないことも多いです。どうしても余裕がなければ、時には迷惑をかけてしまうのもやむを得ないかもしれません。後で迷惑をかけた人に会ったら謝りましょう。その時やむを得なかったことがわかれば、謝れば、たいていは相手は許してくれます。なぜなら、あなたが同じ分野の専門家である限り、相手にとっても、今後のあなたの協力が必要だからです。

結論

「ワークシフト」によると、現在起こっている働き方の変化をまとめると、「ゼネラリストから連続スペシャリストへ」「孤独な競争から協力して起こすイノベーションへ」「大量消費から情熱を傾けられる経験へ」だそうです。

この本で書かれている、未来の社会の働き方は、現在の医者の働き方によく似ていると思います。

そこでは、「職場に縛られない生き方」が実現しますが、現在の会社組織中心とは別の倫理観に従って、今以上にハードワークをしなくてはならないのです。そういう生き方は、今、「縛られない生き方」みたいなことを言っている人たちが想像しているより、厳しい部分も多いです。
そこには、専門家個人の努力と、専門家同士の協力が必要です。情熱をもってそういう生き方ができる人ならば、それはそれで素晴らしいと思うんですが、誰にでも簡単にできるものではないと思います。

ブログタイトルを変更しました

ブログタイトルを変更しました。
新しいタイトルは、「高田の日記」

元々、このブログのタイトルは、「Dr'sTODO」でした(URLはそのままです)。
これは、以前、僕が別の目的で使っていたURLをそのまま流用して、ブログには、そのURLに合わせたタイトルをつけたためです。

元々、このURLは、僕が、自分のところに通ってくる患者の日常生活の改善のために、僕と患者本人とで話し合ってTODOリストをつくって、それを管理するサービスをやるために用意したものでした。そういうわけで、「ドクターズTODO」だったわけです。

そのサービスをやめた後も、なんとなく、自分のブログのために使い続けたわけです。

ただ、タイトルが、そういう明確なテーマを持ったタイトルだと、関係ない話題は、中々書きにくかったりします。そうなると更新も滞ります。
その一方で、自分の中には、ブログのテーマとは特に関係のない話題で、書いてみたい話題が、少しずつ溜まっていきます。

ああ言う事も書いてみたいな、こういうことも書いてみたいな、と思いながら、一方で、更新のとまったブログを維持し続けているというのも、なんだか変な感じがしてきましたので、この際、ブログのタイトルを、特にテーマを定めないものに変えようと思い立ちました。

皆様、今後とも宜しくおねがいします。