2013年5月27日月曜日

医師をターゲットにしたウェブサービスでの医師免許のチェックについて

先日、自宅でボーッとテレビを見ていると、渡辺純一の「雲の階段」のドラマが放映されていた。

医師不足の僻地でやむを得ず医者の代わりに治療行為を行う主人公が、やがて、免許がないことを隠して医師として出世コースを歩みはじめ、そして、最後には、無免許医であることがバレて破綻する、そういう筋の小説である。

で、見てると、今回のテレビドラマ版では、厚生労働省の「医師等資格確認検索」のサービスを使って、ニセ医者であることがばれるという筋になっていた。

ウェブ検索で無免許医がバレるっていう設定は、今風といえば今風。
なんだけれど、このシステム、関係者の間では、欠陥が多くて信用できないという評価が一般的なように思う。
欠陥というのは、平たく言うと、検索に引っかからない医者が多いのだ(これについては、Yahoo知恵袋とか発言小町にもこういう質問とかこういう質問が上がっていた)。
さらに、検索して無事に該当があったとしても、そういう苗字と名前の医者がいるということが分かるだけで、同姓同名の医者を騙ったニセ医者がいたら、もう、それは、この検索システムではチェックできないわけで、なんとも、行政が作ったらしい中途半端なシステムだと思う。

なんで検索に引っかからない人が多いのか?

このシステムは、2年に一回医者自身が行う届出のデータを使って検索しているのだけれど、案外、この届出を忘れる医者が多いのである。まあ、多くの医者は多忙であるから、ついつい忘れてしまう、ということなんであろう。

かくいう私も、前回の届出時(約3年前)には届出を忘れて、システム上は「該当なし」の医者になってしまった。どうせ関係者はほとんど信用していないシステムなので、「該当なし」でも、実害はないのだけれど、なんとなく気持ち悪いので今回はちゃんと届出を行ったのである。でも、先ほど自分の名前を入力してみたところ、依然、「該当なし」である。もう届出してから半年ちかく経つのに、まだデータ更新してないのかな、気持ち悪いなぁ。

まあ、そういうわけで、現状では、オンラインで、医者が自分が医者であることを確実に証明するのは案外難しい。当然、オンライン上の自称医者について、ニセモノかホンモノかを識別することも困難なのである。

こういうアバウトなシステムを放置するからニセ医者が横行するんだろうと思うんだけれど、まあ、行政の怠慢ってのは、今に始まったことじゃないから、仕方がない。

今、個人的に困っているのは、そういうニセ医者による犯罪をどうやって防ぐか、みたいな話に比べると小さな問題で、タイトルに書いた、「医者をターゲットにしたウェブサービスでの免許のチェック」という問題なのだ。

つまり、ウェブで医者相手のサービスを行うときに、相手が正規の医者であることを確認したいことがある。そういう時、どうするのがいいだろうか、という問題。

たとえば、法律などで、相手が正規の医者や医療機関でないと販売できないことになっている商品というのがいくつかある。また、法律では特に規制がなくとも、正規の医者以外に売ってしまうと、少々危険だという商品もある。そういう商品を医者相手にネットで販売したいというケースがあるわけだ。
あるいは、医者のSNS(例えば、治療困難な病気の治療法について、医者同士で討論する場を提供するなどするわけだ)とか、医者向けの会員制ニュースサイトみたいのもある。この手のサイトは、通常は、医者向けにターゲットを絞った広告を打ちたいという製薬会社や医療機器メーカーなどからの広告料で収益を上げている。なので、サイト運営者としては、会員登録している数万人のユーザーたちについて、本当に免許を持っている医者なのだと説明出来なくては、スポンサーからサイト広告料をいただけなくなってしまうわけだ。

で、僕もしばしば、その手のサイトを使うのだけれど、免許のチェックの厳しいサイトからゆるいサイトまで、結構バラバラである。勤務先の病院名とか出身の医科大学の入力を要求されて、その後、勤務先病院に電話や郵便で確認するというサイトもあるし、「あなたは本当に医者ですか」みたいなフォームに「はい」とボタンを押したら、後はノーチェックというものもある。

いま、この手の医者向けサービスを作ろうとしている人から相談を受けているんだけれど、どうも、一番の悩みどころは、この、「免許のチェックをどうするのか」になりそうなのだ。

結局のところ、完全な免許のチェックはできないし、でも、まあ、ある程度厳しいチェックをすることで、完全ではないにせよ、そこそこニセ医者が登録することを避けることはできるはずである。でも、厳しいチェックをすればするほどコストがかかるのだ。そのあたり、どうするかというのが結構悩ましいわけだ。

以下、この問題についてのメモ。

医師免許のチェックが必要なサイトの分類

1,医師向けの有料ニュース配信
たとえば、医楽座など。ちょっと考えてみたけれど、ほとんど免許のチェックは必要無いような気がする。仮にユーザーにニセ医者が混じったとしても、サービス内容に問題が出るわけでもないし、ビジネスに問題が生じるわけでもない。自分で登録していないので、どういうチェックがあるのかも知らない。だれか医楽座のユーザーの方、教えて欲しい。

2,医師向けの物販系
具体的なサイトにはあえてリンクしない。たぶん、チェックの必要性は売るものの種類による。つまり、仮に、医者以外に商品を売ったとして、どれくら重要なトラブルが発生するか、によって、どれくらい厳しいチェックをするべきか変わってくる。それから、どういうつもりでビジネスをやってるのかにもよるだろう。つまり、仮に、ニセ医者に売ってしまうと、なんらかの事故が起こる可能性があるような商品を売るとしても、販売者は、自分は「ニセ医者に騙された被害者」だと主張して責任を回避することができるだろうから。
販売者としては、そういった事故を防ぐために、自社がどれほどのコストをかけていいか、冷静に計算するだろう。

3,無料のニュース配信
日経メディカルとか。多くは広告料をとって利益を上げている。ということは、広告主にユーザーの質について説明出来なくてはいけないだろう。自分の登録した範囲内では、ほとんどのニュースサイトは、サービス提供開始時点から、かなり厳しいチェックをしていたように思う。僕が日経メディカルに登録した時には、ユーザー登録時に、出身大学と勤務先病院を入力した。で、最初にログインする時に必要なパスワードは、勤務先の病院宛に郵送されてきた。
CBニュースなどは、広告料を得るビジネスという感じじゃなくて、人材派遣とか転職支援が本業みたいな感じで、どちらかというと、ニュースは、登録会員へのサービスとして流している感じなので、このカテゴリとは少し違う気がする。

4,無料のSNSなど
たとえば、m3とかメドピアとか。当然、広告収入でビジネスをしているわけで、3と同じように、ユーザーの質について、広告主に説明できなきゃいけないだろう。でも、昔は、3ほど厳しいチェックはしていないものが多かった気がする。だんだん、最近は厳しいチェックをするようになってきたかな。
ずいぶん昔のことで、ハッキリ覚えていないけれど、僕がm3に登録した時には、何もチェックらしいチェックはなかったような気がする。たぶん、これは仕方がない部分もある。3のニュース配信は、大手のメディア企業がスタートさせることが多いのに対して、SNSは資本力の小さい企業がスタートさせることが多いから、たぶん、コストがかかるチェックはできないことが多いんだと思う。大きな企業になってからのm3は、チェックが厳しくなったと聞いているけれど、たぶん、初期に乱発した質の悪いアカウントは、今後も、この会社のネックであり続けるんじゃないかと思う。後発の代表格のメドピアは、このチェックはきちんとしているらしい。たぶん、先行事例の失敗に学んだんじゃないかな。僕は、自分で登録したんじゃないのでよくわからないけれど。

5,無料ユーザーである医師に患者向けコンテンツを作成してもらい、そのコンテンツでビジネスをするタイプ
いくつか実例があるんだけれど、まだ、ビジネスとしては未知数かな。でも、これは、可能なビジネスだと思う。たぶん、やるとしたら、それなりに厳しいチェックが必要なんじゃないかと思う。

いくつかの免許チェックの方法(コストのかからない方法から)
0,全くチェックしない。
「あなたは本当に医者ですか?」なんていう質問とボタンを設置する。それだけ。

1,ユーザー登録時に、名前、勤務先、出身大学、専門、所属学会などを入力させる。
電話で勤務先に在籍確認などしなくても、入力を求めるだけで、ニセ医者の登録に対する相当の抑止力になるんじゃないかと思う。一応、該当の勤務先や学会が実在するかどうかくらいはチェックしてもいいかもしれない。また、その名前について、医師等検索サイトでチェックしてもいい。

2,すでに会員である医者から紹介させる。
要するに、招待制SNSのノリだ。SNSだったら、これはアリだと思う。

3,多くの医者が参加する団体のメールアドレスなどを持っていれば、登録してもらう。
たとえば、UMINみたいな団体のアドレスを持っていれば、それを登録してもらう。これも、完全な方法ではないけれど、強い抑止力になると思う。

4,ユーザー登録時に、医師免許証をスキャンして画像データとして送信させる。
こういう登録方法のサイトを見たことがある。決定的な方法だけれど、登録するユーザーとしては面倒だ。たかがSNSに参加するために、そんな面倒なことをするユーザーなんて、滅多にいないんじゃないかと思う。僕は、自分の医師免許証については、スキャンして、jpegとpdfの形式でDropboxにおいてある。だから、そういう僕にとってはそんなに面倒じゃないはずなんだけれど、それでも、このサイトには登録しなかった。面倒だから。

5,勤務先の病院を入力させて、当該の病院に電話で在籍確認するか、郵送で初期パスワードを送るか、する。
これも、強力な方法。でも、面倒だし、サイト運営者としてはコストが高くつく方法だと思う。

たぶん、ゆるいサイトであれば、1,3の方法と、2,の方法を選べるようにするのが一番楽だろうと思う。つまり、信頼できるユーザーからの紹介と保証があれば、運営側はノーチェック。紹介なしの新規ユーザーについては、細かな入力をさせて、運営側で簡単なチェックする。というような。

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