2012年10月15日月曜日

健康法キュレーションサイトの計画。

以下は、僕が数日前にfacebookに投稿したポストです。
病気の予防や健康の維持には、医者のやる治療などよりも、しばしば、家庭や職場、学校などでの普通の生活習慣のほうが大きな影響を与えます。そこで、僕としては、そういう日常生活に良い影響を与えるような医学の仕事をしたいと思っています。

そういうわけで、いま、医師による健康法レビューサイトみたいなものを作りたいと思っています。
いきなりで意味がわかりにくいでしょうか? 順を追って説明していきます。
実は、僕、昨年の末くらいから少しの間、患者の家庭での健康維持のための活動を支援するウェブサービスをテスト的に期間限定でやっていました。 
どういう内容かと言いますと、主治医(つまり、僕)と、それぞれの患者が、自分の健康のためにやったほうがいい簡単な毎日のタスクを相談して決めて、それを、ウェブやスマートフォンでアクセスできるTODOリストにするのです。 
TODOリストは、できるだけ毎日アクセスしてもらって、そのタスクを実行できた度に、チェックをしてもらっていました。 使ってもらう対象ユーザーは、自分が定期的に診察していた患者から選びました。 
もしうまく行けば、広く一般の人に使ってもらおうと思っていましたが、やっているうちにいろいろ問題にぶつかり、辞めてしまいました。 
いろいろ問題はあったのですが、最大の問題は、健康に良いと言われている習慣についての科学的なデータが不足していたことでした。 
スマートフォンを使いこなしているような世代の患者にこの種のサービスを使ってもらうと、患者は、どんどん自分の生活改善のためのタスクを増やしていきたがるんです。 
「ご飯を食べる順番をこういうふうにしたらいいってテレビで言っていたので、これもタスクに加えたい」 
「ナントカを食べなければ病気になりにくいって聞いたから、これも」 
そういって患者が提案してくる「生活改善」には、科学的・統計的根拠の明快なものもあれば、そうでないものもありました。また、健康に良いという生理学的な理屈が付きそうなものもあれば、反対に、これが患者の体の中でどういう現象を起こすのか、自分の知識では全く判断がつかないものもありました。 
そういう、患者の提案する「健康法」の大部分は、残念ながら僕にはすぐには良し悪しを答えられないものでしたし、診療後に文献等を検索しても、やはり科学的なデータを見つけられないものが多かったのです。そういう、自分には良し悪しがわからない「健康法」について、自分だけの意見で人に勧めたり、反対に批判したりするのはマズいと思ったのです。 
これまでも、患者には紙の記録を薦めてきました。その中で、そういう「健康法」の大量提案を受けたことはありませんでしたから、ひょっとすると、スマホを使った電子記録は、紙の記録より中毒性があるのかもしれません。そのアプリでやってることは、タスクリストをポチッとチェックして、画面が変わって、それだけなんですけれどね。

そこで、こういう患者向けサービスよりも前に、良い健康法についてのレビューみたいなものが必要なんじゃないかと思うようになりました。 
ちょうど、Amazonや食べログのレビューのように、様々な健康法について、医師などの専門化が評価の星をつけたりコメントを書いたりできるようにし、評価の平均やそれぞれの医師の評価やコメントを医師以外の人が見られるようにするのです。 無数に流通している日常生活での健康ハウツーについて真偽を明確に決められるような科学的な証拠は、現時点ではあまりありません。しかし、それでも、その分野の診療経験のある医師に聞けば、何らかの意見が得られるのが普通です。

また、多くの医師は、明確な統計的データがない問題について、自分以外の医師の多数がどう考えているか知りたいと思うでしょうし、他の医師と意見を交換したいと思うはずです。 
医師以外のユーザーからみても、 
「ナントカが健康にいいという科学的な証拠はまだはっきりしないけれど、その分野のお医者さんの80%が、自信の経験から、たぶん健康に良いと思っていますよ。」 
とか 
「現時点では、ナントカが体に悪いという証拠は明確ではないんだけれど、その分野のお医者さんの70%が、それを避けたほうがいいと思っているみたいですよ。」 みたいな話っていうのは、余程のことがない限り、従っておいたほうがいいはずです。

「医師が書く健康法」みたいなジャンルの本があります。多くの先生が薦めたくなるような本もありますが、変なお医者さんが書いた、自分だけの思い込みで書かれたような健康法の本もあります。最近だと、50代なのに30代にしか見えないとかいう先生のどうでもいい本がベストセラーになりましたね。ああいう本を読んだ人が、そこに書かれているのが平均的な多数派の医師の意見なのか、それとも、その人だけの少数意見なのか、今の時点では、調べる方法が不足しているように思うのです。

たぶん、近い将来、多くの人が、スマートフォンのような端末で自分の生活を記録する時代がやってきます。その時、今以上に、日常生活の中での多様な健康法について、医師が質問を受けるようになるでしょう。スマートフォンのような小さな携帯端末は、僕達が、今まで以上に日常の行動や考えていることをより細かく記録したり、コントロールしたりすることができるようにするツールだからです。

もちろん、多数決で科学的な結論を導くことはできませんし、多数派が間違っていることも多くあります。でも、専門家のうちで多数派はどう思っているのか、意見が聞いてみたいということは多くあるでしょう。少なくとも、僕自身には、自分以外の多数派の医師の意見を聞きたい問題がたくさんあります。

みなさま、どう思われますか?
引用は以上です。というわけで、こういう趣旨の健康法キュレーションサイトを作ろうと考えております。

実際にコードを書き始めるより前に、多くの人の意見を聞いてみたいと思いまして、皆様の意見を集めるためにこのブログを始めました。

いろいろなご意見、コメントでいただければ幸甚です。

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