2012年10月22日月曜日

来年には、ようやく、便利な健康管理のサービスが普及し始めるか

個人の健康管理のための情報ツールを、PHR(Personal Health Record)と言います。血圧や体重、病院での検査結果などの情報をひとまとめにして見られるようにしたり、いろんな健康専門家のアドバイスを受けられるようにした情報ツールです。医療IT関連の世界でも、非常に多くのアイデアが登場しては消えていく分野のひとつです。最近は、「健康情報を管理できるウェブサイト」としてPHRを実装しようって企画が多いようですね。

どれも、使ってもらえさえすれば非常に良い製品なのだと思うのですが、期待されているにも関わらず、中々みんな使ってくれない、使い始めても面倒くさくて持続しない、持続しても、サービスを提供している会社としては収益にならない(少なくとも、商業的に大きく成功した例は世界にまだひとつもないのではないかと思います)、という感じで、非常に大変な世界です(この春先にぼくもやろうとしていたのですが、色々トラブルがあって頓挫しました)。そういうわけで、この世界では、期待が大きい分だけ、いろいろな企業が参入してきて、しかし、全くうまく行かずに撤退するということを繰り返しています。本当に死屍累々という感じです。

もっとも、ウェブというのは、そもそも、常に新しいサービスが大量に生まれて、その大部分がごく短い間に撤退していくような世界ですので。死屍累々は健康管理のサービスに限らないのかもしれませんが。

健康管理のために何かのITのツールを使うというのは、ごく自然で有意義なことですし、僕としては、今は死屍累々でも、いずれ、この分野でも何らかのウェブサービスが普及するんじゃないかな、と思っています。

ミッシングリンク

今では、スマートフォンに取って代わられて、ほとんど見かけなくなりましたけれど、少し前まで、PDA(Personal Digital Assistant)っていう種類の製品群がありました。予定表や電話帳など、いろんな情報を簡単に管理したり調べることができる手のひらサイズの小さなコンピュータのことです。ザウルスやPalmなどのことって言えば、当時を知っている人は分かるでしょうか?当時を知らない若い人は、今のスマートフォンから携帯電話の機能を取り除いたような製品、と考えてもらっても結構です。

実は、この種の製品は、はじめは全然売れませんでした。まさに死屍累々。

「手のひらサイズのマシンで個人に必要な情報を管理できたら便利だろう」というアイデアは、多くの人が持っていました。ごく自然なアイデアですからね。ですから、多くの会社がこの分野で製品を企画しました。でも、そのほとんどが期待されたほどは売れず、商業的には成功したとは言いがたいものでした。

多少売れた製品もありました。SHARPのザウルスなどがそうでした。しかし、そういう製品も、購入した人たちの多くは使いこなせなかったのです。多くの人は、様々な機能をしばらく試した後、結局、単に、机の中に放置することになったのでした。僕自身も、こういう製品は大好きでしたので、いくつか買いました。でも、実際に使ってみると、買うときに想像していたよりもずっと、電話帳や予定表などの情報の入力や管理が面倒臭く、結局、全然長続きしなかったのです。

この状況が劇的に変わったのはPalmが登場した時でした。Palmは、PCとデータの同期をする機能を持ったはじめてのPDAでした。それまで誰も思いつかなかったのが不思議なくらいですが、それまでは、携帯端末とPCの間で、データの同期はできなかったのです。そして、電話帳などのデータ入力が面倒だったのは、手のひらサイズの小さなキーボードでなんとか入力しようとしていたからだったのです。

データ同期ができるようになって、PDAは一気に普及しました。

PDAが快適に使われるために必要な機能のうちで最後に実装された「データ同期機能」は、いわば、携帯端末のミッシングリンクだったのです。

つまり、PDAには、長い間、それを便利に使うための機能が一つだけ欠けていたのです。そして、PDAがあればきっと便利だろうと考えて製品を企画していたメーカーの人たちも、長い間、みんな、そのたった一つだけ欠けた重要機能が、自分たちの製品には足りないことに気が付かなかったのでした。

もちろん、PDAの後継者である、今のスマートフォンにもPCとのデータ同期機能はついています。

先に述べたPHR(健康情報管理ツール)も、使ってもらえればきっと便利なんだろうと思います。きっと、将来は普及すると思います。あれば便利だと思うから、多くの会社の人たちが企画するのです。でも、今は、一向に使ってもらえない。おそらく、PDAの時と同様、ひとつかふたつ、一度思いつけば当たり前にしか見えないようなミッシングリンクがあるのだと思っています。

バーティ

先日、とあるベンチャー企業の創業2周年のパーティに呼ばれ、参加してきました。医療IT関連の事業を手がける会社で、創業以来、応援させていただいている会社です。

パーティの席で、久し振りに会った社員の方と話すと、なにやら新事業を検討しているとのこと。で、詳しく聞いてみると、その新事業というのが、生活習慣病患者のためのPHRなのでした。

どの会社にとっても、現時点では、PHRで成功するのは難しいと思っています。何がミッシングリンクなのか誰にもわからないからです。

僕のように、「とりあえず採算度外視で小さくやってみた」というのであればともかく、商業的に収益をあげなくてはいけない立場であれば、余程の成算がなければ手を出すべきではないのではないかな、と思っていました。

というわけで、正直、あまり期待はできないな、と思いながら、でも、自分でも関心の強い分野ですので、具体的なサービスの内容について聞いてみました。

聞いてみて驚きました。サービスモデルについてはともかく、収益モデルについては、このうえなく斬新な方法だったのです。たぶん、収益モデルとしてはこれしかないんじゃないかな、と思いました。

どういうやり方なのか、まだブログなどには書けないのですが、非常に面白い試みだと思いました。

そういうわけで、ミッシングリンクのうち、少なくともひとつは見つかったのではないかな、と思っています。ミッシングリンクが見つかれば、あとは普及は早いのではないかと思っています。

近い将来、おそらく、来年辺りには、便利な健康管理のためのサービスが次々普及し始める可能性は大きいのではないかな、と思っています。

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