2014年4月14日月曜日

STAP細胞騒動と科学の時代の終わり

STAP細胞騒動は、様々な捏造が見つかった結果、結局、信じるに足る証拠が何一つ残っていないという状況になってしまいました。現時点での、この問題に関する僕の評価を書いておきます。

1,元の論文に書いてあった、STAP現象の証拠であった写真や実験結果はすべて捏造、もしくは信用できない記述であった。
2,無論、論文が信用できないことと、STAP現象それ自体が存在しないことは別であるが、現時点で、STAP現象は、元論文と同じ条件では再現に失敗している。また、その後公開された実験方法でも再現に失敗している。このため、現時点では、仮にSTAP現象があるとしても、少なくとも元論文に記載されたような現象ではないことははっきりしている。
3,その一方で、今回の件が完全に捏造と考えるのは難しい。仮に、STAP現象が完全にウソであれば、「STAP細胞」が胎盤へ分化したという現象とつじつまが合わないと思われる。したがって、論文中のSTAP現象の記載には相当の誤りがあったとしても、何か変な現象が見つかった可能性は高いと思われる。
4,ただ、その、今回の研究で見つかったかもしれない「変な現象」については、どうも、当初期待されたような、医学への広い応用ができそうなものではなさそうである。仮に、刺激によって細胞が多能性を持つ現象があるとしても、これほど再現に手間取っているところを見ると、簡単に再現できるものではないらしいからである。これでは、仮にSTAP現象が存在するとしても、すでに存在するiPS細胞などに比べて技術的に優位な点は殆ど無い。
5,仮にSTAP現象が存在したとしても、これの発見者として小保方氏の名前がクレジットされることはないであろう。彼女の報告した論文の記載には誤りが多く、実験記録も残っていないようであるため、彼女が実験したという証拠が何一つないからである。

結論から言いますと、何か不思議な現象が見つかったかもしれないが、それは、あまり役に立つようには思えず、また、「発見者」の発言もまるで信用できない状態です。オカルト雑誌の後ろの方に載っているような、読者投稿の「ツチノコ目撃談」みたいなものです。たとえツチノコが存在したとしても、ツチノコ目撃談の投稿者を科学的な発見者として扱うわけには行かないでしょう。

奇妙なことに、そういう状況にも関わらず、小保方氏は、会見後、一定の支持を集めているように見えます。

僕は、たぶん、「科学を信じる時代」が終わってしまったのではないかと思っています。

今回のことに限らず、原発にせよ、予防接種にせよ、がんもどきにせよ、多くの人は、すでに、「科学的に正しいこと」を信じません。

これまでだって、一部の理科系の教育を受けた人以外は、科学的に正しい推論の方法、科学的事実や実験の結果の正しい評価方法について知識を持っていたわけではありませんでした。ただ単に、なんとなく、科学的な「権威」や「教科書」を信じてきただけです。そして、いつのまにか、相当数の人が、権威や教科書よりも「自分の気持ち」を優先するようになりました。そして、「理研の調査」や「専門家」などの権威を信じる代わりに、自分が信じたいものを信じるようになったのでしょう。

多くの人が、権威よりも自分の気持ちを優先するようになってきている現在、人々が信じていることと科学的に正しいことの間に乖離が発生してきていることは、ある程度は仕方がないことなのかもしれません。

どうやってこの乖離を埋めていけばいいのか、現状を直視して考えていく必要があると思っています。

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