2014年3月17日月曜日

STAP細胞発見のルーズボールは、まだフィールドに残っているか?

STAP細胞とは何か、今、現時点で分かることをまとめておきたいと思っていたのですが、僕が書くよりも非常によくまとまった良い解説を見つけたので、リンクします。
NHKのサイエンスZEROの番組内容をまとめたページです。

でも、このページ自体が、剽窃というか、無許可転載じゃないかという気もします。たぶん、番組内容を書き下すにあたって、NHKに許可とってないでしょうから。でも、非常に良い記事ですので、消える前に読んでおいてください。
 
さて、ここからは、僕は、上にリンクしたサイエンスZEROのページで書いていないことを書こうと思います(ですので、以下を読む前に、上のリンクを読んでください)。

僕は、今回のこの研究については、論文の作り方は相当に粗雑だったのですが、発見それ自体が完全に嘘だったとは考えにくいと思っています。そして、現時点で、外野が理研を責めすぎることは、日本の国益の観点からも問題がある結果になりかねないと思っています。

報道によると、今回の研究は、小保方さんのチームが「STAP細胞」を作り、若山先生のチームがその細胞を実験して多能性があるかチェックをする、という手順で行われたそうです。そして、皆さんご承知のように、現在、この「STAP細胞」の作り方に関する論文の記述に、様々な問題があるため、この「STAP細胞」自体が本当に作られたのか、疑問が持たれている状態です。

では、仮に、小保方さんが本当はSTAP細胞なんて作っていないのだとしたら、そして、彼女が共同研究者たち全員を騙していたのだとしたら、どのような方法で共同研究者たちを騙しおおせたのでしょう?そもそも、若山先生のところに送っていた「STAP細胞」は、なんだったんでしょう?(若山先生は、相次ぐ疑惑の中で、この、自分が受け取っていた細胞の素性が信用できなくなったから論文取り下げを呼びかけたのでした。)

この詐欺を小保方さんが実行するために、一番考えやすい方法は、ES細胞など、すでに確立されている方法でこっそりと万能細胞を作り、そして、それを「STAP細胞」に混ぜて若山先生のチームに送ることでしょう。

この仮説は、ひとつだけ矛盾点があります。それは、若山先生のところに送られた細胞は、胎盤への分化が確認されているらしいことです。ES細胞やiPS細胞などの既知の万能細胞は、胎盤や羊膜に分化することができません。仮に小保方さんの実験が完全に嘘だとしたらつじつまが合わないな、と僕が思っているのは、この一点がどうにもわからないからです。
 
若山先生は、自分のところに送られた「STAP細胞」が何なのか、小保方さんたちが信用できなくなったとして、自分のところに残っている「STAP細胞」は何なのか、分析を始めたとのことです。おそらく、この「STAP細胞」に、既知のES細胞やiPS細胞が混ざっていないかという点については、比較的早い時期にはっきりすると思います。
では、もし、この発見が全くのウソというわけではないとすると、どういうことになるのでしょうか?
 
「STAP細胞」というものが何なのかはともかく、胎盤への分化ができる、ES細胞などとは異なる何か別の種類の細胞だという可能性が高いということは言えると思うのです。そして、もし、STAP細胞が胎盤への分化ができるということであれば、STAP細胞は、ES細胞などの「多能性細胞(胎盤や羊膜には分化できないが、胎児そのものを作る細胞はすべて作ることができる細胞)」よりも受精卵など「全能性細胞(胎盤や羊膜も含めて、すべての細胞を作ることができる細胞)」に近い細胞かもしれないということを意味しています。もし、そうであれば、やはり、これは生物学や医学に大きな影響を与える発見です。

理研の小保方さんたちは、ゴール直前で「STAP細胞」というボールを取りこぼしました。いま、「STAPと呼ばれた何か」が何なのかをきちんと調べなおすことは、ノーベル賞級のルーズボールをキャッチすることになるかもしれません。僕は、あまり、理研の連中を攻撃することは、この作業を妨害することになるかもしれないと思っています。この件で考えられる最悪のシナリオは、「世間の批判で理研がSTAP細胞に関する論文や特許を取り下げたあとで、誰かがSTAP細胞の追試に成功して特許をかっさらっていく。そして、将来の日本人がSTAPから派生する技術を使うときに、ずっと海外の誰かに特許使用料を支払い続けることになる。」ということだと思います。ここまで公費を投入して進めてきた研究です。そういう結果にしては損だと思いますね。論文の取り下げは、急ぐ必要はありません。じっくり検討して考えればいいことだと思います。

最後に、さして根拠のない僕の予想ですが、どうも、STAP細胞というのは、Muse細胞の一種(だとすると、かなり変わった変種のMuse細胞ですが)かもしれないな、という気がします。Muse細胞というのは、あちこちの組織の中に存在する小さな細胞で、酸などの刺激や機械的刺激に強く、かつ、(限定的ながら)多能性をもつ幹細胞です。外傷などのとき、傷を修復するために働くと考えられています。機械的刺激に強いため組織が傷を負った時に生き残ることができ、かつ、多能性があるため傷を修復するために必要な細胞を作ることができるんですね。

もちろん、酸の刺激で細胞の初期化ができるという可能性もあるのですが、元々、そこには多能性細胞があったという可能性も相当にあるんじゃないかと思うのです。

1 件のコメント:

  1. 時間をかけても様々な追試を行って欲しいものです。
    論文の誤謬は指摘された通りのようですが、核心の事実を突き止めている可能性があるかもしれず、外野はNHKの番組のように冷静になるべきですね。一部の新聞、雑誌の個人攻撃は許されるものではないです。

    返信削除